「天才的な学生による急成長事業の創出」――多くの人が抱いているシリコンバレーのイメージではないだろうか。しかし、実際には多くの学生は既存の企業に就職する。ブランク氏のように「遅咲きの起業家」も少なくない。情熱と革新に満ちた企業で働くことも、将来の起業へのプラスになるとする。(ITpro)

 シリコンバレーには、いくつかの“通説”があります。その一つに、「成功したすべてのスタートアップは、ハーバード大学やスタンフォード大学出身の20歳くらいの学生が創業した」というものです。現実には、そのようなケースは例外的であって、すべてがそうではありません。

30歳は年寄りか?

 私はかつての教え子と、牧場付きの自宅で、いつものようにボブキャット(野生の猫)が獲物を追っているのを見ながらコーヒーを飲んでいました。この元教え子は、「今、仕事で行き詰まっている」と電話をかけてきて、どうしても会いたいと言うので、牧場に来てもらったのです。

 話すうちに次第に分かってきたのは、ちょうど30歳になったばかりの彼が、会社を創業した経験がないと悩んでいるということでした。「多くの人が、卒業するとすぐ会社を始めます。アントレプレナーシップに関心のある友人は、自分の会社を始めました。一方、私は会社で、単に一歩一歩、階段を登っているだけなんです」。彼は、成長途上の企業で、上のポジションに少しずつ昇進しているとのことでした。

 彼の会社のような“元スタートアップ企業”は、繰り返しが可能なビジネスモデルを見つけ出し、大会社に発展するプロセスの途中にあります。企業運営を専門とする役員を雇い、拡張を続けます(図)。

図●スタートアップから大企業への移行プロセス
図●スタートアップから大企業への移行プロセス

 私が「これまで取り組んできたことの、何が気に入らないのか?」と尋ねると、彼は「私は、とても多くのことを学びました」と答え、「もし大学卒業後に起業していたら、あらゆる間違いを繰り返したことでしょう」と言うのです。

 彼の問題は何だろう、と私は考えました。そこで「君の友人はどうしているのだろう?」と、ボブキャットがモグラに忍び寄るのを見ながら聞きました。彼の答えは「2~3人は何とかやっていますが、友人のスタートアップのほとんどは大失敗です。彼らがその間に得た収入を考えると、ウォルマートに働いていた方が良かったかもしれません」とのことでした。