2011年6月30日に開催された金融庁企業会計審議会総会と関係者への取材を総合すると、今回の「IFRS適用延期」の議論は、IFRS適用に対する「慎重派」が1年以上前から準備し、東日本大震災を機に声を上げた可能性が高い。

図●IFRSの強制適用について議論のきっかけとなった産業界からの要望書の概要
図●IFRSの強制適用について議論のきっかけとなった産業界からの要望書の概要
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 製造業を中心とした企業と日本商工会議所が連名で金融相に提出した「我が国のIFRS対応に関する要望(要望書)」に名を連ねた21社のうち、16社は企業財務委員会の委員を務める()。三菱電機の佐藤常任顧問は同委員会の委員長である。

 企業財務委員会の中間報告では大きく三つの事項を求めている。連結財務諸表と単体財務諸表を切り分けて議論すること、IFRSを含めた開示制度を再設計すること、そしてIFRSの影響を受けないように非上場企業向けの会計基準を新たに作ることだ。要望書と内容は同一でないが、類似している箇所は少なくない。

 IFRS適用延期の発端となった自見金融相の発言も、要望書と類似している。IFRS強制適用時の準備期間について要望書が「例えば5年」としているのに対し、発言では「5~7年」とした。

 また猶予措置の一例として要望書では、現在「16年3月期まで」と決まっている米国会計基準の使用期限の撤廃を求めているのに対し、「使用期限を撤廃する」と自見金融相は宣言している。明確には言っていないが、要望書の内容を踏まえたとみるのが自然だろう。