英国の規制当局であるオフコムは2011年3月、4G(第4世代移動体通信)用の周波数オークション案を発表した。ドイツをはじめとする各国の動きが本格化した今、英国は欧州でも遅れた国の一つになった。2012年第1四半期のオークション開始を目指して再びスタートを切った英国の動きを解説する。


 2010年にドイツで大規模な周波数オークションが実施され、成功裡に終わったことは記憶に新しい。360MHz幅という広大な周波数(一部返還されたGSM帯域を含む)がオークションにかけられ、ドイツのモバイル向け周波数供給量は一挙に倍以上に膨らんだ。ドイツの成功によって、複数の周波数帯を一気に放出する同時オークションの流れができたと言えそうだ。

 モバイル向けの周波数需給状況は、スマートフォンやタブレット端末の爆発的普及により一変した。周波数の逼迫が急速に現実のものとなり、EU(欧州連合)の各国当局は周波数配分を先延ばしにする余裕がなくなった。こうした状況から、2011~2012年に欧州では4G(第4世代移動体通信)用周波数のオークションラッシュが起こりそうだ。今後2~3年でモバイル周波数はおおむね倍増することになるだろう。

スタートでつまずいた英国

 4G周波数のオークションといえば、かつて英国が先頭集団にいると思える時期があった。2005年に議論を始め、2008年実施というスケジュールも確定し、当時は英国が4Gオークションで一番乗りを果たすとみられていた。ところが案に反発した事業者が訴訟を起こし、これに年月を費やすうちに、今や欧州でも遅れた国の一つになってしまった(表1)。

表1●EU各国の周波数付与状況(2011年6月時点)<br>「計画なし」は現行免許の期限が先であるため、付与計画が未定の場合を指す。
表1●EU各国の周波数付与状況(2011年6月時点)
「計画なし」は現行免許の期限が先であるため、付与計画が未定の場合を指す。
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 大規模な周波数の放出に欠かせないのは、従前のモバイル向け周波数の再編と、アナログ跡地と呼ばれる放送向け周波数の新たな配分である。いずれも既存の事業者が直接利害をもっているために、新たな配分には事業者間の調整に手間取るという問題が起こりがちである。英国はこの再編問題のつまずきが災いした。