ビジネスブレイン太田昭和
会計システム研究所 所長
中澤 進
日本企業と欧米企業では、グローバル経営管理のあり方をはじめ、様々な違いがあることは本連載で繰り返し指摘してきた。そもそも会計情報に関して、両者の価値観は大いに異なる。
極端な言い方をすると、日本企業の多くは会計情報を「財務諸表を作成するための数値」としか捉えていない。これに対して欧米企業、特にビジネスをグローバルに展開している企業は、会計情報を明らかに「経営管理の道具」と位置付けている。
こうした違いが、なぜ生まれるのか。マネジメントスタイルが異なるというのは、一つの理由である。
会計情報はグローバル企業に不可欠な「数値」
欧米企業は異人種・異文化の中、ダイバーシティー(多様性)を前提としたマネジメントスタイルを採っている。そこでは属人性の排除が重要になるので、必然的に数値に頼った管理を中心とせざるを得ない。
企業グループとしてグローバルに活動する環境の下で、評価の公平性を保つには精度の高い数値が必要になる。ここでクローズアップしてくるのが、一定の基準で計上された会計数値である。会計情報はグループにおけるグローバルなビジネス活動を支える共通言語として、さらに業績評価の指標として活用できるからである。
こうした用途で会計情報を活用するには、数値の精度はもとより、評価指標としても耐え得る品質と粒度を確保する必要がある。勘定科目の設定レベルはどうか、グループで統一しているか、などが論点になる。
IFRS(国際会計基準)のIAS第27号(連結及び個別財務諸表)で挙げている「会計方針の統一」とは、このような欧米企業におけるマネジメントスタイルを前提に考える必要がある。本来、勘定科目の統一までを視野に入れたものであると理解しなければいけない。
会計情報は「説明責任」を果たす役割も担う
会計情報は、説明責任を果たす役割も担う。会計の語源が「アカウンタビリティー」であることからも分かるであろう。この価値観も、日本企業と欧米企業では大きく異なる。
欧米企業のCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)にとって、四半期決算説明会や株主総会は自分が遂行してきた業務内容・結果について直接、投資家と対話できる極めて有用な機会である。時には晴れの舞台でさえある。
経営者はこうした機会を利用して、投資家との情報格差、すなわち情報の非対称性(関連記事:大震災が顕わにした情報の非対称性(上)、同(下))の最小化を図る。投資家保護という側面ももちろんあるが、訴訟リスクを回避するための重要な手段と経営者は捉えている。
財務諸表として開示される会計数値が説明責任を果たすためには、この会計数値が現場の活動結果とできる限り正確に連動していることが必要になる。すなわち、業績評価の指標と開示の数値は連動させておかなければならない。これが、よく言われている財管一致(財務会計と管理会計の一致。制管一致とも呼ぶ)である。ここでも、財管一致の基盤として、連結企業グループで勘定科目を統一しておくことが必要不可欠と言える。