ゼンド・ジャパンが、PHPアプリケーションの統合開発環境である「Zend Studio」の新バージョン8の日本語版を2011年9月1日に出荷します。前バージョンである「Zend Studio 7.1」からの強化点は大きく二つ。一つはJavaScriptサポートの強化、もう一つは「リクエストモニター」と呼ばれるWebサーバーとの通信時間をビジュアル化した解析ツールの搭載です。

PHPを知り尽くした開発者の手によるツール

 Web開発のサーバーサイド・スクリプティング言語として広く普及しているPHPは、バージョン4以降今日まで「Zend Engine」と呼ばれるスクリプト言語処理エンジンを採用しています。このエンジンを開発したZend Technologies(本社は米カリフォルニア、技術センターはイスラエル)は、PHP3の開発者たちによって設立された企業です。PHPの開発そのものはThe PHP Groupと呼ばれる非営利団体によって続けられていますが、現在もZend Technologiesの技術者はThe PHP Groupに参加しPHPの発展に尽力しています。

 さて、このZend Technologiesは2002年3月から「Zend Studio」と呼ばれるPHP専用の統合開発環境(IDE)も作成し販売を行っています。いわばZend Studioは世界で一番PHPをよく知る企業の手によって生み出された、PHP専用のIDEというわけです。もともとは独自のインタフェースを使っていたZend Studioですが、2006年のバージョン5からは汎用IDEである「Eclipse」をベースとしたIDEに生まれ変わりました。

 このZend Studioは日本語版を、ゼンド・ジャパンが販売されています。2010年4月に発売されたバージョン7.1が、各種機能を強化して2011年にバージョン8.0となり、日本語版が2011年9月11日に発売されることになりました(英語版8.0は執筆時点で既に発売中)。このバージョン8.0のベースはEclipse 3.6になります。今回、ゼンド・ジャパンから日本語化されたテクニカル評価版を借りられたので、一足早くZend Studio 8の新機能についてプレビューをしていくことにします。

 Zend Studio 8日本語版の対応OSはWindows XP/2003/Vista/7(x86 and x86-64)、Linux x86 (x86 and x86-64)、対応PHPバージョンはPHP4.x以降。価格は、年間ライセンスが4万7040円、2ライセンスパックが6万2790円、アカデミックライセンスが2万1000円など。30日間評価版を、同社Webサイトから無償でダウンロードできます。

 今回はWindows 7の64bit版にWindows x86版という組み合わせでプレビューを行います。なお正式発売前の評価版を使用していますので、機能や外観等が一部製品版とは異なる可能性があります。

インストールとPHPの開発環境

 インストールでは、いったん英語版をインストール後にEclipseのローカライズ機能を使って日本語化する手順になっています。Eclipseに慣れていない人にとっては、やや煩雑に感じられるかと思いますが、日本語化の解説マニュアルに沿って行えば特に難しいことはありません。評価版ではEclipse Babel(Eclipseを国際化するためのツールを開発するプロジェクト)を使って日本語化するフェイズでリポジトリーのバージョン表記が古くなっていたためダウンロード先を参照できず、日本語化が進められないという問題が発生しましたが、製品版では解決すると思われます。

図1●Zend Studioの起動画面。「ようこそ」というタブにZend Studioに関するニュースなどが表示される
図1●Zend Studioの起動画面。「ようこそ」というタブにZend Studioに関するニュースなどが表示される
[画像のクリックで拡大表示]

 Zend StudioはIDEなので基本的には、プロジェクトという単位で開発を行います。もちろん単体PHPファイルを作成、編集することもできますが、サイトの全体、あるいは一部をプロジェクトとしてまとめて管理するのがメインです。

図2●[ファイル]メニューから[新規(N)]とたどったところの全項目
図2●[ファイル]メニューから[新規(N)]とたどったところの全項目
[画像のクリックで拡大表示]

 [ファイル]メニューの[新規(N)]を見ると、PHPファイルだけではなく、HTMLやCSS、XMLといったファイルの作成もサポートしているのがわかります。また「タスク」のようなプロジェクトの付随情報もここから作成できます。

図3●プロジェクトの新規作成設定画面。一番下に「このプロジェクトでJavaScriptサポートを有効にする」というチェックボックスが見える
図3●プロジェクトの新規作成設定画面。一番下に「このプロジェクトでJavaScriptサポートを有効にする」というチェックボックスが見える
[画像のクリックで拡大表示]

 プロジェクトを生成したら、あとは必要なファイルを新規で作成するか、既存のファイルをインポートしてコーディングを始めます。エディタの編集画面は、もちろん日本語にも対応しています。

図4●コード編集画面。キーワードの色分けや入力補助、コメントの展開や格納などIDEとしての基本はすべて押さえている
図4●コード編集画面。キーワードの色分けや入力補助、コメントの展開や格納などIDEとしての基本はすべて押さえている
[画像のクリックで拡大表示]

 PHPの開発部分については、既に前バージョンまでにも十分に練り込まれていて、良い意味でこれといって特筆するべき点はありません。キーワードの色分けやコード入力時の補助入力機能もついていますし、/* */形式のコメントは行番号欄の+表示からたたんだり展開したりができます。前バージョンに搭載されていたPHPDocを使ったドキュメント生成機能も引き継いでいます。

図5●補助入力機能の例。forとタイプすると選択肢が表示される。制御文の場合は書式ごと簡易入力も可能
図5●補助入力機能の例。forとタイプすると選択肢が表示される。制御文の場合は書式ごと簡易入力も可能
[画像のクリックで拡大表示]

 このほか、Subversion(SVN)やCVSを使ったバージョン管理や、PHPUnitを使ったテスト機能、各種デバッグなど、IDEとして十分な開発環境が整っています。前バージョンの評価時にはドキュメントは付属しませんでしたが、本バージョンでは250ページ超の日本語によるPDFドキュメントが同梱されていました。同等の物が製品にも付属すると思われますので、各機能の使い方についてわかりにくいということもないでしょう。