上海や北京などの大都市よりも人件費が低いことを強みに、中国内陸部や沿岸部の中都市でITサービスの集積地を新設・強化する動きが出てきている。最たる例が、中国・山東省の煙台市だ(画面)。

15万人のIT技術者が働くパークを造成

画面●煙台市のWebサイト
画面●煙台市のWebサイト
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 同市は2011年8月、ITアウトソーシングやBPOを手掛けるIT企業などが集積する「サービスパーク」の新設工事に着工した。2014年に一部区画を開業させ、2020年前後に全区画を完成させる計画だ。

 煙台市が新設するサービスパークの総面積は9500平方メートル。このうち1000平方メートルを2014年に完成させる。開設5年後に10万人、最終的には15万人の就業人員規模を目指す。

 煙台市は、山東省では青島市に次ぎ第二の産業規模を誇る。サービスパーク事業を推進する組織、煙台高新技術産業園区管理委員会の畢秋軍副主任は「関西国際空港から直行便で2時間強という立地面での強みを生かし、日本のITサービス企業を誘致したい」と意気込む。

人件費は大連の半分

 日本向けのソフト集積地としては大連が最も成功を収めている。これに対して、畢副主任は「煙台の人件費は大連の半分だ」とコスト競争力をアピールする。「すでに日本のIT企業数社から引き合いがある」という。

 中国では大都市を中心に賃金の上昇が続いており、日本のIT企業は人件費を抑えるため中国内陸部に開発拠点を設ける動きが出てきている。ただし内陸部は日本からは遠く、気候や風土も地域によっては都市部とは大きく異なる。

 煙台市はサービスパークの開設では後発だが、沿岸部でありながら賃金がそれほど高騰していないという特徴を生かし、日本向けにシステム開発・運用やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)といったITサービスを提供する企業の誘致を目指す。