スマートフォンユーザーのスマートフォンとの付き合い方、スマートフォンを所持することで変化する消費者の価値観、スマートフォンの特徴について調査結果から分かったことをまとめ、この特集を締めくくることにする。

 以下が調査から導き出された現在のスマートフォンユーザーの特徴である(図1)。

図1●調査から得られたスマートフォンユーザーの特徴
図1●調査から得られたスマートフォンユーザーの特徴
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  • スマートフォンユーザーは、スマートフォン購入以前と比較すると日常生活や価値観に変化があり、スマートフォンは消費者の行動に影響を与える
  • 情報収集・発信ともに「量」「機会」「利用する手段やツール」が増え、情報感度が高まり、アクティビティが増える
  • スマートフォンユーザーは、購買機会が増え、消費意欲が高い
  • スマートフォンユーザーは、情報感度が高く、人脈が広く、情報発信力が高いインフルエンス力が強い

新しい消費者層であるスマホユーザー

 スマートフォンユーザーは様々な面でアクティブである。情報受発信、消費行動、情報共有でアクティブであり、情報選択や消費選択も積極的に行っていることが予見される(第2回)。

 スマートフォンは、消費機会を増やし消費意欲を高めるとともに、消費行動においては、手軽に情報検索を実現し、価格比較を容易に行い、口コミを確認し、購買をする、というような選択消費をしやすい環境を実現する。“スマート”な消費者を後押しする存在であるとも言えるだろう。ただし、情報に流され、衝動買いが増えるといった面も示唆されており、情報をうまく使いこなす層と使いこなせない層の二極化がしばらくは続くかもしれない(第3回)。

 また、本調査の様々なところで、スマートフォンとソーシャルメディアの組み合わせについてのコメントが多く見受けられた。スマートフォンを使うことによって、ソーシャルメディア(Twitter、Facebookなど)が活用しやすくなり、ソーシャルメディア上での活動が活発になっていると考えられる。ただ、情報の受発信が容易になりすぎることで、「スマートフォンに依存してしまう」「監視されているように感じてしまう」といった負の面があることも第4回の意見などからうかがえる。

 アクティブなスマートフォンユーザーに対するマーケティングを考える際には、「どう情報提供をしていくか」「どうソーシャルメディアで情報共有されていくか」「スマートな消費者にどう選ばれるポジショニングをしていくか」といったことを考えることが、企業各社のしばらくの課題となるだろう。

 調査対象となった現在のスマートフォンユーザーは、第2回第4回のデータでも見られた通り、アーリーアダプター層に当たると想定される。今後はアーリーアダプター層に追随し普及を確実なものにするマジョリティ(多数採用者)層にもスマートフォンが広がると考えられる。社会のトレンドの先読みをするには、マジョリティ層に普及する前の現在、スマートフォンユーザーの意見や行動を参考にすることが有用であることは言うまでもない。

 スマートフォン市場が急速に伸びる中、今後、スマートフォンでの調査の重要性とニーズは、より一層高まると考えられる。その需要に応えるべく、スマートフォンユーザー像を掘り下げて、継続して調査結果を報告していきたい。


江尻 尚平(えじり しょうへい)
モバイルマーケティング・ジャパン 代表取締役社長
 株式会社モバイルマーケティング・ジャパン代表取締役社長CEO。上智大学理工学部卒業後、大手外資系携帯電話メーカーにてサービス企画、コンテンツプロバイダー支援などに従事。その後、慶應義塾大学大学院経営管理研究科にて、消費者の行動心理に基づくマーケティング理論や経営戦略を専攻、経営学修士(MBA)を取得。2006年に株式会社MobileMarketing.JP(現株式会社モバイルマーケティング・ジャパン)を設立、代表取締役に就任。消費者調査やコンテンツ・サービス開発やプロモーション支援による、マーケティング支援に取り組んでいる。モバイル・IT研究会会長を務める。