図1●発電要素とそのコンポーネント
図1●発電要素とそのコンポーネント
出典:国立標準技術研究所(NIST)

 今回は発電要素を解説する。発電要素は文字通り、電気を生成するという役割を担っているが、そう単純なものではない。オペレーション、マーケット、送電の各要素と密接に情報や電力をやり取りする(図1)。

 主なコンポーネントについて述べる前に日米での発電源のエネルギー比率を比較してみよう。昨今、福島第一原子力発電所の事故に伴い、発電に関する議論が盛んである。発電方式は、再生可能エネルギーをベースにするものと、そうでないものに大きく分けることができる。後者には、主に重油、石炭、原子力、天然ガスがある。図2に2009年の米国の電力生成のエネルギー源の割合を示す。再生可能エネルギーは新エネに含まれるが、2009年時点ではわずか4%でほとんどないに等しい。また、比較のために2009年の日本のおける発電の電源エネルギー源の割合を図3に、1973年の日本の発電源のエネルギーの比率を図4に示す。

図2●2009年米国の電力生成エネルギー源の割合。年間総発電量は3兆8840億kWh(出典:米国エネルギー情報局)
図2●2009年米国の電力生成エネルギー源の割合。年間総発電量は3兆8840億kWh
(出典:米国エネルギー情報局)
図3●2009年の日本の発電のためのエネルギー源の比率。年間総発電量は9551kWh(出典:経済産業省 資源エネルギー庁)
図3●2009年の日本の発電のためのエネルギー源の比率。年間総発電量は9551kWh
(出典:経済産業省 資源エネルギー庁)
図4●日本の1973年の発電源エネルギーの比率。年間総発電量は3770kWh(出典:経済産業省 資源エネルギー庁)
図4●日本の1973年の発電源エネルギーの比率。年間総発電量は3770kWh
(出典:経済産業省 資源エネルギー庁)

 三つの図を解析して最初に気づくことは、2009年段階で米国の年間消費電力量は日本の約4倍であることだ。また米国では重油の比率が極端に少ない。米国では重油は発電にはほとんど使用されず、大部分がガソリンなどに加工されて車両の燃料として主に消費される。その代わり、石炭による発電が半分近くを占める。特に北東部には石炭を燃料とする発電所が多い。石炭をそのまま燃やすとCO2やその他の有害な物質が空気中に放出されるので、それを取り込む方式(二酸化炭素の回収・貯蔵またはCCS)が採用される。

 最近、資本枯渇のため、その方式を取りやめた電力会社があった。米国のAmerican Electric Powerだ。当初は米エネルギー省からの補助金を得てCCSを敢行する予定であったが、電気代への上乗せの困難さや不景気の影響でこれを断念した。米国は日本や欧州と異なり、環境保護の法律が連邦政府のレベルでまだ整っていない。しかし現在、米環境保護庁は硫黄酸化物と窒素酸化物の空気中への放出を制限する州間空気汚染ルールの制定を米国の東半分で進めている。テキサス州などでは、この規則が法制化されれば老朽化した火力発電所を停止せざる得なくなり、電力不足が起きると心配する人もいる。

 日本の場合、1973年から2009年の36年間で、発電量は約2.5倍になっている。1973年のオイルショックから電力生成における重油の割合が73%から2009年には8%に激減している。これを補うのが原子力である。1973年の段階で3%だったものが29%にまで増加した。40年後の2050年前後にはどうなっているだろうか。太陽光や風力がICTの技術を持って、原発に代わる基幹電源のエネルギー源になることができるだろうか。

 再生可能エネルギーをベースとする発電はさらに、発電量を一定に保つことができるかどうかで、さらに二つに分けられる。発電能力をコントロールできるものは、「水力」「揚水」「バイオマス」「地熱」である。コントロールできないものは「太陽光」「風力」である。その他にも潮力や数多くの発電方式や発電のエネルギーの源が開発されつつあるが、それらについては項を改めたい。