2009~2010年にかけてトヨタ自動車へのバッシングの嵐が米国で吹き荒れた。トヨタ車のアクセルペダルや電子制御システムに対する欠陥報道が相次ぎ、品質への信頼は損なわれた。

 実際には製品に欠陥は存在しなかったにもかかわらず、これほど問題が大きくなったのはなぜか。本書は多くのトヨタ関係者に取材し、現地・現物で問題の原因を追究する姿勢を、この問題では怠っていたためと結論づけている。

 トヨタは品質問題への対応権限を日本に集中させていた。責任者は米国からの情報に基づき、日本で欠陥の有無を確認していた。だが真の問題は広報対応のまずさだった。メディアからの追及に、品質関連の権限を持たない米国法人は満足に答えられず、情報を隠している印象を与えた。日本の経営陣は米国現地のこうした雰囲気を認識できておらず、対応が後手に回る一方だった。

 この危機を教訓に、トヨタは品質に関する権限を海外拠点に持たせるなどの“カイゼン”を実施したという。危機対応、原因分析の進め方、海外拠点に権限を委譲するガバナンスなど、グローバル化を進める企業のリーダーにとって参考になる話題が満載だ。

トヨタ 危機の教訓

トヨタ 危機の教訓
ジェフリー・K・ライカー/ティモシー・N・オグデン著
稲垣 公夫訳
日経BP社発行
2310円(税込)