7月24日正午、東北3県を除く全国で地上アナログ放送が終了した。国内テレビの台数シェアが1位のシャープが近年力を入れているのが、AndroidOS搭載のスマートフォンである。中でも、国内主要3キャリアに供給しているモデルとして、L/Rのツインカメラを内蔵し、3Dを手軽に撮影・再生可能なタイプがポピュラーだ。今回、KDDIの「AQUOS PHONE IS12SH」を試してみた。

手軽に3D映像で遊ぶには面白い

写真1●AQUOS PHONE IS12SH
写真1●AQUOS PHONE IS12SH
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 手にとって最初の印象だが、液晶ディスプレイはサイズが4.2インチ型で、960×540画素、最大26万色表示という3D液晶であり、映像表現力はかなり高い。それは普通にワンセグ視聴でも実感できた。まず、YouTubeの3D映像を事務所内の無線LANへ接続した上で、視差バリア方式の裸眼立体視の表示画質を確認した。その結果、元ソースの良し悪しが判別できる仕上がりとなっていた。なお、AQUOS PHONE IS12SHでは、3D動画を撮影したり、さらにYouTubeにアップロードしたりできる。

 筆者はこうした新製品を試す時、まずは直感的にどこまで操作できるかを試すようにしている(写真1)。3D動画を撮影する場合、「ビデオカメラ」のアイコンを探してタッチすれば事足りる。2Dと3Dの切り替えも画面上のマークをタッチするのみ。画質は720pのHDTV映像である。室内などの暗いシーンでは多少のノイズ感はあるが、野外での人物や風景の撮影には問題ないレベルである。

 ただし、3Dモードではカメラが揺れたり、ズームなどのスピードが速かったりすると、実験に使用した筆者所有のソニーの液晶テレビ「BRAVIA」での鑑賞では船酔いの感覚も出た。一定レベルのクオリティを確保した臨場感のある3D映像を撮影できる本機の再生では、大画面になるほどこの船酔いの現象が起こるのではないかと考えられる。

写真2●3D映像をテレビに出力
写真2●3D映像をテレビに出力
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 やはり3Dの撮影には練習が必要なのと二本の腕で本機をしっかり抑えるのが肝要かと思う。できれば、三脚の上に固定し、ズームを用いず動きのあるものを撮影するのが「自己撮影モノ3D大画面鑑賞」の王道かもしれない。筆者は試さなかったが、顔認証機能もあるというし、2Dの静止画や動画を3Dに変換する機能も用意されている。

 筆者は、3Dの映像を液晶テレビBRAVIAにHDMI出力するのに、マイクロプラグをノーマルサイズに変換するHDMIアダプターを用いた。また、シャープが予め3Dコンテンツとして用意したものもHDMI経由でテレビ鑑賞したが、元ソースがよければ通常のBDレコーダーで再生した時に近い質感が得られることがわかる(写真2)。

多様なアプリの使い勝手はエンドユーザー次第

写真3●モシモカメラ3Dを利用
写真3●モシモカメラ3Dを利用
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 一方、撮影時から映像に味付けを行えるARカメラアプリ「モシモカメラ3D」も興味深い。筆者の機材にDATのケースを置いて、3D静止画を撮影して本機のディスプレイで鑑賞したが、CS-PCMチューナーの手前にDATのケースが♪マークと共に浮き上がる感覚を得た(写真3)。こういった3Dアプリものの写真や動画は、大画面鑑賞よりも本機の裸眼3Dがメガネなしに楽しむ、という本来の使い勝手を反映させた鑑賞スタイルとして使えそうだ。

 ポピュラーな映像といえば、音楽クリップが挙げられるだろう。2011年3月には、スペースシャワーネットワークの株主としてKDDIが加わった。6月にはスペースシャワーTVがセレクトした音楽ライブの映像を、「LISMO WAVE」のKDDIスマートフォン無線LAN専用チャンネル向けにリアルタイムに配信するチャンネル「SPACE SHOWER LIVE Channel」が始まっている。

 また、Musicclipsも三つのチャンネルが用意されている。なお音楽関連だと、「LISMO unlimited powered by レコチョク」という月額定額制で洋楽を聴き放題というサービスも開始されている。

 LISMO WAVEの最大の目玉は全国のFM局のサイマルキャストが試聴可能な点である。聴いてみて同じFM東京の番組をネットワークしていたとしても、局によって音質がかなり違うことに驚いた。無線LAN環境時だけではなく、3Gネットワークの環境でも局ごとに音質にばらつきがある。一方、Radikoをダウンロードして視聴した場合は、たとえバッファリングに時間がかかったとしても、再生してしまえば在京局全ての音質はかなりいいと感じた。SNSやゲームなど「スマホ」の世界は自分でアプリケーションをダウンロード・管理していく世界なので、本機をAV専用機というつもりはないが、AVに特化したカスタマイズモデルが存在してもいいのではという印象を持った。


佐藤 和俊(さとう かずとし)
放送アナリスト
茨城大学人文学部卒。シンクタンクや衛星放送会社,大手玩具メーカーを経て,放送アナリストとして独立。現在,投資銀行のアドバイザーや放送・通信事業者のコンサルティングを手がける。各種機材の使用体験レポートや評論執筆も多い。