物理インフラの最後のポイントは、(3)「建物の堅牢性」だ(1の「電源の冗長性」と2の「省電力性」は前回を参照)。「ビルの立地となる岩盤が固い」ということはデータセンターの重要な要素である。地震の被害を受けにくくなるからだ。最新のデータセンターでは、さらに耐震・免震構造の建築をウリにしている(図2-1)。

図2-1●耐震・免震構造
図2-1●耐震・免震構造
ビットアイルの第4データセンターでは、H鋼を組み合わせて建物の耐震強度を上げている。また、セコムトラストシステムズのセキュアデータセンター新館やNTTコミュニケーションズの東京第5データセンターなどでは、建物の下部にダンパーなどを設置し、免震構造を採用している。
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図2-2●日本のデータセンターならではのファシリティー基準
図2-2●日本のデータセンターならではのファシリティー基準
日本ならではの状況を加味して作られたデータセンター基準が、JDCCのティアである。
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 地震の多い日本では、データセンターのファシリティー基準も海外のものとは異なるものが必要だ。そこで日本データセンター協会では2010年に「ティア」を制定した(図2-2)。海外のデータセンターのファシリティー基準としてはUptime Tierがあるが、これを改良し、海外よりも多く起こる地震について重点的に考慮したものになっている


コンテナ型が本格稼働へ

図2-3●コンテナ型データセンターが続々
図2-3●コンテナ型データセンターが続々
IIJのコンテナ型データセンターは島根県松江市で利用が始まった。日立情報システムズのコンテナ型データセンターは多様な形態のものが発売されている。
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 一方で、立地にとらわれない可搬性の高いデータセンターが最近では注目を浴びている。それがコンテナ型データセンターだ(図2-3)。

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は同社製コンテナ型ユニット「IZmo」を利用した松江データセンターパークの稼働を始めた。IZmo内部にはサーバーなどの機器が搭載されている。このデータセンターはIIJがホスティングサービスを提供するための設備である。基本的にはハウジング用途ではないので、コンテナ型であっても特段問題はない

 日立情報システムズでは、同社製のコンテナ型データセンターの販売を開始した。これはホスティングサービスを展開するためのものではない。同社では「データセンターをユーザーの拠点にデリバリーするようなもの」(アウトソーシングセンタ事業部運用技術開発本部データセンタ設計部の小林 秀樹部長)と位置付けている。ユーザー企業の敷地内に設置し、内部機器の監視は日立情報システムズが行うという運用方法である。ラック形態の小型のものもあり、東日本大震災で被災した自治体からの問い合わせがあるという。設置場所の自由度が高いコンテナ型は、災害時に稼働するデータセンターという新たなニーズにも応えようとしている