図1-1●物理インフラとは
図1-1●物理インフラとは
データセンター業界では、ファシリティーなどとも呼ぶ。建物そのものや電源周りなどのことを指す。「通信インフラのためのインフラ」ともいえるものだ。
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 耐災害性の観点で見るべき物理インフラは、「電気関係」と「建築物」の二つだ。前者はさらに、災害時に効果がある「冗長性」と、被害が長期化したときにメリットがある「省電力性」に分けられる。つまり、耐災害性でチェックすべきデータセンターの物理インフラは、(1)「電源の冗長性」、(2)「省電力性」、(3)「建物の堅牢性」---の三つである(図1-1)。(3)については次回に解説する。


停電時でも稼働できるか

 東日本大震災後、データセンター事業者には企業のシステム担当者からの問い合わせが急増している。今まで社内で情報システムを運用していた企業が、事業継続のために、自社運用からデータセンターでの運用に変えようと検討しているのだ。

 データセンター事業者にはありがたい話だが、困難にも直面している。東京電力福島第一原子力発電所の事故により、東京電力管内の地域では電力供給量が電力需要を満たせない可能性があるからだ。そうなると管内は、停電など不測の事態に陥らないとも限らない。データセンターは様々な企業の情報システムを預かっており、停電でそれらが止まることは許されない。それを乗り切るための工夫の一つが、(1)「電源の冗長性」だ。

図1-2●外部からの電気の供給が止まっても自家発電機やUPSで稼働を続ける
図1-2●外部からの電気の供給が止まっても自家発電機やUPSで稼働を続ける
大手のデータセンターであれば、ビル内に自家発電機を複数台設置している。また、発電に使う燃料を優先的に供給を受けられるようにしている。商用電源が途絶えたときに発電機が稼働することになるが、発電機が電気を供給できるようになるのに、少し時間がかかる。その間は、UPSでサーバーやネットワーク機器に電気を供給する。写真の自家発電機はセコムトラストシステムズ、UPSはNTTコミュニケーションズのそれぞれのデータセンターに設置されているもの。
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 万が一停電などが起こったときのために、データセンターは自家発電機とUPSを用意している(図1-2)。多くのデータセンターでは、外部からの商用電源(電力会社から買っている電気)が切れた場合でもデータセンターのビル内に設置した自家発電機に切り替えて、機器に電力を供給できるようにしている。故障する可能性も考慮し、一般的に自家発電機は2台以上設置して冗長化している。

 この自家発電機をサポートするための装置がUPSだ。外部電源が切れてから自家発電機が稼働するまでは数分かかる。その間の電力供給に使う「つなぎ」の蓄電池だ。

 注意したいのは、データセンターの自家発電機は「非常用」であり、通常時のように長期間にわたって機器に電源を供給するものではないという点だ。複数台の自家発電機を順番に稼働させて電源供給の時間を延ばすことを検討しているデータセンター事業者もあるが、発電機があくまでも非常用であるということを考えると、現実的な運用方法ではない

 そこで、2カ所の変電所から別々に電源を引き込んでいるデータセンターもある。セコムトラストシステムズのセキュアデータセンター新館などだ。自家発電機やUPSといったデータセンター内部での電源の冗長性に加えて変電所を複数使い、電源の冗長性をさらに強固にしている。