今回は、新・14カ条の第11条「デジタルネイティブ世代に対応したHPを整備せよ!」についてご説明します。この新11条は、旧14カ条には全くなかった項目です。

 自治体の方でITに関係している人たちは「デジタルネイティブ」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。大前研一さんが使われた言葉だと思いますが、1985年はパソコン用OSである「Windows」が発売された年です。1985年以降に生まれた子どもたちは、物心がついたときから身近にITを使ったコンピュータや電気製品があるので、それ以前の世代とは根本的にITに対する感覚が違うという意味で、デジタルネイティブ世代と言われています。

 私は1984年に農林水産省に入りましたが、当時、私が配属された課にはパソコンなど1台もありませんでした。公文書作成については、和文タイプライターという一種の活版印刷機のようなものがありました。和文タイプのタイピストがいて、その方たちのご機嫌をとりながら急ぎの公文書の作成を頼むのが一仕事でした。(和文タイプの動画はこちら

 翌年の1985年に、リコーの「リポート」というワープロ専用機が入りました。作成のスピードが速いし、簡単に文字の大きさも変えられるので、評判になりました。私は、学生のときに英文タイプを習っていたので、誰よりも入力のスピードが速く、そのために、急ぎの文書のときは、すべて私に文書の作成の仕事が回ってくるので、閉口したことを覚えています。国会の答弁書などは、相変わらず手書きで、それをコピーしていた時代でした。

 ところが約10年後の1996年にはパソコンは一人一台配備となり、インターネットやメールを仕事に使うことが当たり前の時代となりました。役所間でもメールで連絡を取り合っていました。劇的な変化です。

保護者世代のデジタルネイティブ比率が急上昇

 物心ついたときからパソコンや携帯電話が当たり前という生活をしている若者は、商品の買い方、選び方が違います。携帯やパソコンを使ってホームページやツイッターなどから情報を仕入れて比較し、ネットで買うか、これと決めてからお店に買い物に行きます。友人同士のメールのやり取りがとても頻繁で、情報が良くも悪くもあっという間に伝わっていきます。

 では、このデジタルネイティブ世代が人口に占める割合はどのように変化していくでしょうか。まずは、私の住んでいる福岡市を見てみましょう。

 20歳から60歳までの働く世代に占めるデジタルネイティブ世代の割合は、2005年では1985年に生まれた子供がようやく20歳になろうかというところですので、まだ0%です。2020年になっても34%と大したことはなさそうですが、20~39歳の若い世代に限ってみると違う姿が見えてきます。

 福岡市では、2010年時点でデジタルネイティブ世代の割合は24%ですが、2020年時点では72%、2025年では100%へと急増します(図1)。この数字は自治体にとって要注意の数字です。なぜなら、保育所サービスの対象者や、小中学校の児童・生徒の保護者に占めるデジタルネイティブの割合がどんどん増えていくことを意味するからです。

 この傾向は全国どこでも同じです。日本最大の市である横浜市においても同様です(図2)。

図1●福岡市の20~39歳人口に占めるデジタルネイティブ世代の割合
図1●福岡市の20~39歳人口に占めるデジタルネイティブ世代の割合
図2●横浜市の20~39歳人口に占めるデジタルネイティブ世代の割合
図2●横浜市の20~39歳人口に占めるデジタルネイティブ世代の割合

 この世代は、市役所から情報を得るのにも、まずはホームページからですし、連絡もメールを使うことが多いのです。ところが残念ながら、2025年になっても、市役所の政策を決める50歳以上の幹部は1975年以前の生まれなので、ITに対する体感的な理解度はまるで違います。

 観光などの情報収集に至っては、今とは比較にならないくらいホームページやブログ、ツイッターなどからの情報が大事になることは言うまでもありません。