日本ヒューレット・パッカード 小川 大地

 VMware vSphereは、可用性向上に関する基本機能を一通りそろえている。ここでは、VMware vSphereが備える可用性向上機能を広く解説していきたい。

 大きく分けるとメンテナンスなどに伴う計画停止を不要にする「vMotion」「Storage vMotion」、そして障害時のダウンタイムを短縮する「VMware HA(High Availability)」「VMware FT(Fault Tolerance)」がある。

計画停止を不要にするvMotion

 最初に、vMotionとStorage vMotionを見ていこう。この二つはいずれも稼働中の仮想マシンを移行(マイグレーション)させるホットマイグレーション技術である。vMotionでは、負荷が重くなった仮想マシンを高性能なESXホストへ、Storage vMotionでは高性能なストレージ装置に移して対処するといったことが、それぞれダウンタイムなしに実行できる。

 まずvMotionは先ほど説明したように、「あるホストで実行中の仮想マシンを、稼働させたまま別のホストに移行する」という機能である。vMotionで仮想マシンを移行するとき、実際にはシステムのサービスが停止するものの、その時間は非常に短い。そのため、システム利用者はvMotionによる停止時間をほとんど意識することはない。

 vMotionは基本的には、移行させる仮想マシンのメモリーやプロセッサの中の情報を別のホストへコピーすることで実現している。

 vMotionを利用するときは図1のように、移行元と移行先のホストを共有ストレージで接続する。そのため、ストレージ上の情報についてはコピーが不要である。

図1●vMotionのシステム構成と実行時のイベント
図1●vMotionのシステム構成と実行時のイベント
[画像のクリックで拡大表示]

 共有ストレージとしてはSAN(Storage Area Network)、SAS(Serial Attached SCSI)、iSCSI、NFS(Network File System)のいずれかを利用できる。SAN、SAS、iSCSIの場合は、共有ストレージにはVMware独自のVMFSというクラスターファイルシステムが、NFSの場合はNFSのファイルシステムを利用することで、各ホスト間のロック管理が行える。

 一方、ホスト上のメモリーやプロセッサの中の情報については、高速のvMotion専用ネットワークでコピーする。各種情報を高速に転送する必要があるため、vMotionの専用ネットワークはギガビットイーサネット以上で構成する必要がある。