iOSで2次元グラフィックスが滑らかに動くゲームなどのアプリケーションを作りたいとき、「cocos2d」は最もお薦めできるライブラリだ。高性能かつ使い方は簡単、オープンソースで無償、実績も十分(App Storeで提供されている2500以上のアプリがcocos2dを利用している)、定番の物理エンジン「Box2D」を同こんと、非の打ち所がない。従来、滑らかなグラフィックス描画を実現したい場合は、2次元と言えどもOpenGL ESを利用する必要があったが、OpenGL ESはお世辞にも使いやすいとは言えない。cocos2dはOpenGL ESをラップし、プログラマにOpenGL ESの知識がほとんどなくても、グラフィックス描画のハードウエアアクセラレーションの恩恵を提供するという優れものなのだ。

 米国ではすでに複数のcocos2d解説本が出版されているが、この本はその中で最初に出た「Learn iPhone and iPad cocos2d Game Development」の翻訳である。一読した感じでは、とても丁寧に訳されていることに加え、訳注に様々な追加情報が盛り込まれて、お得感がある。

 内容はシーンやスプライトといった基本機能の解説から始まり、派手な演出に必須のパーティクル、最近のゲームに多い疑似3Dの鳥瞰図的なグラフィックスの描画方法など、入門書以上の領域もカバーしている。特にお薦めは物理エンジンBox2Dを扱う第12章と、それを使ってピンボールゲームを作る第13章。Box2Dを使ったゲームの作成が一通り学べる内容となっている。「Angry Birds」などiOSの定番人気ゲームもBox2Dを使っている。これは昨今ぜひマスターしたい分野である。

cocos2dで作るiPhone&iPadゲームプログラミング

cocos2dで作るiPhone&iPadゲームプログラミング
Steffen Itterheim著
クイープ訳
畑圭輔/坂本一樹/加藤寛人/高丘知央監修
インプレスジャパン発行
3990円(税込)