東京・早稲田大学で2011年7月17日に開催された「Android Bazaar and Conference 2011 Summer」。企業や大学などの研究プロジェクトを紹介する「アカデミートラック」では、第一線の研究者らがAndroid OSを仮想化する「Virtual Smartphone」や、災害時などに有効なP2P通信の仕組みを紹介した。講演会場となった教室は60人以上の聴講者でほぼ満席。最新研究テーマへの関心の高さをうかがわせた。

STBとタブレットで高度なサービスを実現---KDDI研究所

写真●KDDI研究所の伊藤篤氏
写真●KDDI研究所の伊藤篤氏

 最初に登壇したのは、KDDI研究所 開発センターアプリケーションプラットフォームグループ主幹エンジニアの伊藤篤氏。同研究所で研究開発を進めている「Android STB」について講演した。Android STBは、Android OSを使ったテレビ視聴用セットトップボックス(STB)。KDDIは2010年末、AndroidベースのSTBの試作品を発表済み(関連記事)。今回紹介したのはAndroid STBの機能拡張版である。

 現在KDDI研究所では、テレビ番組、番組と連動した各種サービスをインターネットで提供する仕組み、それからSTBや手元で使うタブレット端末(KDDIの「XOOM」を使用)といった機器などを協調動作させる「WEB-TV」の仕組みを試験的に開発しているという。タブレット端末はテレビのリモコンとして機能するほか、番組の中身についてTwitterでツイートする機能など、各種のWebサービスと連携できる。WEB-TVにかかわる機能や仕様については、Androidを使った組み込み機器についての団体であるOESF(Open Embedded Software Foundation)で提案し標準化を進めていくという。

 AndroidをSTBのOSとして採用した理由は、開発生産性や移植性の高さ、他の機器との連携のしやすさなどである。「Androidは(ソフトの)フルスタックを備えていて、機器間の移植性が高い。しかもAndroid搭載機器同士の連携が容易なので、可能性が広がる」と伊藤氏は語る。

 KDDI研究所はAndroidベースのSTBを核に、ユーザーがコンテンツやサービスをさまざまな場面で楽しめるような仕組みを実現させていくという。「クラウド側のサーバーを通じて、家庭ではテレビ、出先では携帯電話やカーナビなどで、シームレスにコンテンツやサービスを楽しめる。そのような将来像を考えている」(伊藤氏)。