総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」は2011年6月20日、「青少年インターネットワーキンググループ(WG)」の第9回会合を開催した。このWGは主に青少年の携帯電話機によるインターネット利用の環境整備を目的としている。特にスマートフォンの普及が進んでおり、青少年が携帯電話機からインターネットを利用する環境は大きく変化している。それを踏まえた課題や対策を議論している。

 議論の的になっているのが、前回会合で事務局の総務省から挙げられた検討課題である「スマートフォンのアプリ経由での有害情報アクセスへの対処」および「スマートフォンで無線LANに接続する際のフィルタリングの提供について」である。今回会合でも主査代理である千葉大学教育学部教授の藤川大祐氏から、今後の議論のたたき台となる意見が報告された。

 スマートフォンのアプリ経由での有害情報アクセスへの対処とは、アプリを経由したインターネット上の情報閲覧にはフィルタリングソフトによる閲覧制限が機能しない場合があることを指す。

 藤川氏の意見では、携帯電話事業者や端末メーカーに対して、アプリ経由の閲覧制限機能を利用者やその保護者が容易に利用できる状態にする必要があるとした。また携帯電話事業者やその販売代理店に対しては、閲覧制限機能の存在についての周知が進んでいないとして、販売時に利用者やその保護者に対して説明することを求めた。

 アプリには、どのような内容が含まれるか、さらにその有害の程度を数字で表すレーティングが用いられていることがあるが、そうしたレーティングがない場合は、保護者の判断材料に欠けるとして、携帯電話事業者や端末メーカーに情報の提供を求めるとした。これ対して構成員からは、「例えば電子書籍を閲覧するアプリには、いったんアプリをダウンロードした後、アプリから書籍を選んで購入する場合がある。ダウンロード時にはコンテンツがなく、レーティングが難しい」という意見もあった。

 レーティングは、アプリの開発者が自ら行う場合や、アプリマーケットの主催者などの第三者が行う場合がある。前者の場合は開発者によるレーティングの実効性確保、後者の場合は第三者の中立性の確保がそれぞれ必要と指摘した。具体的には、中立公正な第三者機関による関与によって補正する仕組みを提供することが望ましいと述べた。

 スマートフォンで無線LANに接続する際のフィルタリングの提供については、無線LAN経由でフィルタリングが利用できないケースがあることを指している。さらに無線LAN経由のインターネットアクセスについて、機能制限をかけられない端末が多いことも指摘した。

 こうした現状を踏まえた上で藤川氏は、携帯電話事業者や販売代理店には、無線LAN経由ではフィルタリングが利用できない場合があることを周知すべきだとした。さらに、端末メーカーに対しては、フィルタリングソフトの開発事業者などと協力して、端末にフィルタリングソフトを搭載するといった検討を開始することが望ましいと述べた。