広域災害や電力危機に直面した場合にもシステムの運用を継続するには、データセンター自体が使えなくなる状況への備えが必要だ。いざというときには、遠隔地に設けたディザスタリカバリー(DR、災害復旧)サイトにシステムでの処理を引き継げるようにする。

 近年のネットワークコストの低下や、クラウドコンピューティングの普及によって、DRの常識は急速に変わりつつある。これまでDRサイトを用意できるのは、大企業や金融機関など一部の企業に限られていた。クラウドを活用すれば、中小企業であっても、DRサイトを確保できるようになる。高額な広帯域ネットワークを使わなくても大丈夫だ。知識が古いまま、DRについて誤解していないか、今すぐに確認すべきだ。

異なる電力会社管内にDRサイトを設置せよ

 「多くの金融機関がメインサイトとDRサイトとの距離を60キロメートル強にしている。しかし、東日本大震災と電力危機によって、これでは災害対策にならないことが明らかになった」。東京海上日動リスクコンサルティングの青地主席研究員はこう指摘する。

 距離の根拠は、金融情報システムセンター(FISC)が発行する「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」だった。同書は国が1992年に発表した「60キロメートル離れていれば直下型地震の影響を回避できる」という予測を紹介していた。ただしFISCは2011年3月に発行した同書の第8版で、予測が古くなったとして、この記述を削除した。

 金融機関のデータセンターが多い東京都多摩市と千葉県印西市の直線距離は60~65キロメートル。いずれも東京電力の管内であり、広域災害の際は両地域とも停電になる恐れがある。「DRサイトは、メインサイトとは異なる電力会社の管内に置くことが望ましい」(青地主席研究員)。