システムを継続稼働する上では、何はなくとも電力と通信の確保が欠かせない。東日本大震災では、数日にわたる停電や1週間を超える通信の不通が起き、システムの稼働に大きな影響を与えた。さらに今夏は、東京電力、東北電力、中部電力、九州電力の各管内で、電力の供給が需要を満たせなくなる事態も懸念されている。

 経済産業省は企業や家庭に、ピーク時の電力使用量の15%削減を求めている。それでも電力供給が足りなかった場合は、3月のような計画停電や突然の停電となる恐れもある。

 電力はいつ足りなくなるか分からない。電力が途絶えれば、通信も利用できなくなる。東日本大震災の教訓を踏まえて、電力や通信の停止に備えるポイントを紹介する。

自家発電装置は燃料調達に気をつけよ

写真1●KVHの「東京データセンター2」の自家発電装置
写真●KVHの「東京データセンター2」の自家発電装置
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 無停電電源装置(UPS)や自家発電装置(写真)などの非常用電源装置は、突然の停電に備えるためのものだ。夏場のピーク電力を非常用電源装置で補おうとするのは不可能である。

 UPSがサーバーに電力を供給できるのは長くて10分程度。「UPSはあくまでも、停電時にサーバーを安全にシャットダウンするための装置」(NECフィールディングの森田憲治サービス開発部マネージャー)であるからだ。

 自家発電装置は、軽油やA重油といった燃料があれば発電を続けられる。しかし燃料の調達に不安が残る。石油会社との間で燃料供給の優先契約を結んでいるデータセンター事業者もあるが、非常時の燃料供給は政府機関や病院が最優先だ。民間企業が確実に入手できる保証は無い。

 ピーク電力削減は、省電力サーバーへの切り替えや、不要不急のサーバーの停止などで対応すべきだ。同時に、次の停電に備えてUPSなどの耐用期間を確認する。

 UPSのバッテリーは、寿命が3~5年だが、100%の放電を繰り返すと性能は急速に劣化する。3月の計画停電で放電を繰り返したUPSは、特に注意が必要だ。

 自家発電装置は、累積運転時間が1000時間を超えた場合に、オーバーホール(分解・再組み立て)が必要だ。気付かない間に累計運転時間が積み上がっている恐れもある。あるデータセンター事業者の担当者は「毎月1回、自家発電装置の稼働訓練を実施している」と語る。 。