田中淳子氏と芦屋広太氏によるヒューマンスキル往復書簡の第6回。「反対意見によって自分を見直すことができる」という芦屋氏の言葉を受けて、田中氏が「認めてもらう」ことの大切さを語ります。相手のよいところを見つけて、言葉で伝えることが「自信と勇気と努力をもたらす魔法の杖」になると、田中氏は言います。(編集部)

芦屋さんへ

 「反対されること」への対処法、興味深く読みました(第5回:反対されるのは「良いこと」) 。反対意見によって自分を見直すことができる、というのは確かにその通りだと思います。猪突猛進に何かを進めようとしているときも、反対意見によって「それでいいのか?」と立ち止まり、考える機会になることがありますものね。

 芦屋さんの文章を読んで、ふと思い出したのは、「批判してくれた人にもありがとう」という言葉です。2010年に開催されたサッカー ワールドカップの後で、本田圭佑選手がインタビューで口にしていました。

 「批判されたからこそ、自分たちのあり方も冷静に見つめ直せたし、なにくそと頑張れた」。本田選手が言いたかったのは、このようなことだったのではないかと思います。

「ヒューマンスキルの研修なんて、簡単でしょう?」

 仕事をするときに何をエネルギー源とするかは、人によって違うでしょう。褒められて元気になる人もいれば、批判されて「負けるものか」「今に見ていろ」と闘志を燃やす人もいる。

 批判ではなかったのですが、頭の片隅にずっと残っているちょっと「ネガティブ」な言葉があります。ずいぶん前に、ある同業の方にこう言われました。「ヒューマンスキルの研修なんて、簡単でしょう? いろいろ説明して、最後に『要するに、皆さんはボクの真似をしなければいいんですよ』と言えばいいのだから。そうすれば、講師が手本を示さなくても言い訳になるしね」。

 面と向かって笑顔でこう言われたときは、さすがに絶句しました。そういう仕事の捉え方に、唖然(あぜん)とするしかなかったのです。格別憤りを感じたわけではありませんが、「そんな風に考える人がいるのか。だったら、ぜひ見返してやろう!」と思ったものです。

ダメ出しされるよりも、認めてほしい

 20年くらい前のことですが、こんな後輩がいました。「田中さん、私は褒められたからって伸びるタイプではないので、ぜひ、叱咤(しった)激励してください。まだ駄目、まだまだだ、と言われたほうが奮起するんです」。彼女はこう言いました。

 実際、彼女は周囲からの厳しいフィードバックにもきちんと対峙し、自分の「現在」に満足することも慢心することもなく、成長していきました。その後転職した先でも大活躍しています。すごいなあとは思いますが、ちょっと珍しいタイプですよね。

 たいていの人は、「褒められたい」「認められたい」と思っています。プラスの言葉を誰かに言ってもらうことで、頑張れるのではないでしょうか。私もダメ出しされるよりは、認めてもらいたいと思うタイプです。その方がうんと力が出ます。