日本Androidの会が主催するイベント「Android Bazaar and Conference 2011 Summer」(ABC 2011 Summer)が2011年7月17日、早稲田大学で開催された。

写真●ABC 2011 Summerの基調講演
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 日本Androidの会 会長の丸山不二夫氏は、「がんばれ日本。がんばれAndroid -- オープンな技術とオープンな社会 --」と題して基調講演を行った。

写真●日本Androidの会 会長の丸山不二夫氏
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 開発者として、この2011年3月11日に起きた東日本大震災をどう捉え、どう行動するか──基調講演はこのような問いから始まった。

 大震災の直後に、ソフトウエア開発者たちがやったことは、「自分達にできること」を探して実行することだった。丸山氏は、安否情報データベース「Person Finder」や震災情報共有サイト「Sinsai.info」、Android開発者コミュニティが実施した「災害時支援アプリ・マッシュアップ・ミーティング」の様子などを紹介し、「シンパシーに基づく共同体。インフラの重要性。相互利他・相互互恵・贈与の精神」がそこには具体化されていた、と論じた。

 「非常時には、日常のルールとは異なる行動規範が求められるし、日常のルールの矛盾が露呈する。そういう場面で何を選ぶか。そこには我々がこれから未来の行動規範として取るべきものが先取りされていたと思う」と丸山氏は語る。例えば、震災直後には、NHKはテレビ番組をUstreamやニコニコ動画で再配信することを例外的に認めた。このように、日常のルールでは認められない行動が、非常時にあっては人々を助ける事例が大量に生じた。

写真●「非常時」の行動の規範に注目
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 災害に対抗しうる技術的な試みも行われた。

 一つは、原発事故による放射性物質の流出の影響を可視化する、ガイガーカウンター活用アプリだ。市場で入手できるガイガー管、手作りの電子回路、それにAndroid搭載スマートフォンを組み合わせ、放射線量を時刻や位置と共に記録、あるいはソーシャルメディアに投稿する機能を備えたガジェットの試作が進んでいる。このようなガジェットを使った日本各地の放射線量を測定する動きが始まっている。原発事故という災害に対抗して「草の根」の放射線量測定網を形成しようという試みである。

 大災害時の通信インフラ途絶を想定した「Monac」もある。アドホック通信によるP2Pネットワークを用いて、携帯電話網やWiFi網が途絶しても、通信を可能とする。例えば首都圏は3月11日には「帰宅難民」で街中が混雑したが、このような状況ではスマートフォン利用者どうしの距離も近く、近接通信によるP2Pネットワークが有効に機能すると考えられる。

写真●Monacの紹介
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