長期的な電力削減も視野に入れて、オフィスの節電をさらに進めるなら、節電のための統合ソリューションも選択肢になる。これらは改正省エネ法への対応をきっかけに登場してきたもの。多くの企業が各社の強みを生かしたサービスを提供しており、パソコンやプリンターなど、システムの節電から、ビルや工場丸ごとの節電に至るまで、多彩な省エネ支援策を用意している(図1)。

図1●IT企業や商社などの節電・省エネの統合ソリューション
図1●IT企業や商社などの節電・省エネの統合ソリューション
個別のパソコンやサーバー、プリンターに限らず、システム全体やビル全体を含めた節電・省エネ化を請け負う企業は多い。左はNECの「エネパルPCパック」。中央は日立製作所都市システム開発の「省エネルギーソリューション」。右は日本IBMの「Tivoli Endpoint Manager for Power Management」。
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 例えば、NECの「エネパルPCパック」は、パソコンシステムに焦点を当てたソリューションだ。各パソコンの電力使用状況を管理サーバーで集計して“見える化”。その上で「各ユーザーの利用パターンを把握して、自律的に省エネ設定を最適化できる」(NEC ビジネスPC事業部の岸川充寿マネージャー)。

 富士ゼロックスの「環境負荷監視システム」は、複合機ユーザーの個人ごとのCO2排出量の表示に加え、照明やコンセント電源を含めたオフィス全体を“見える化”できる。また同社は、複合機の管理ソフトとパソコンの情報を管理する富士通の運用管理ソフト「Systemwalker Desktop Patrol」を連携させ、システム機器全体を“見える化”するソリューションも提供している。

“見える化”が意識を改革

 ビル全体の省エネを支援するサービスは数多いが、キヤノンITソリューションズが提供する「省エネオフィス支援ソリューション」も、その一つ。ビル内の分電盤にセンサーを取り付け、電力消費を“見える化”する。既存のビルエネルギー管理システム(BEMS)に追加導入して、居室や設備単位でより細かく電力を把握できる(図2)。また、照明や空調の制御や法令に沿った報告書作成も可能だ。

図2●ビル全体を「見える化」で節電
図2●ビル全体を「見える化」で節電
キヤノンITソリューションズが提供する「省エネオフィス支援ソリューション」のシステムイメージ。計測用のエネルギーモニターをオフィスのビル各所の分電盤に取り付け、詳細な電力を集計してリアルタイムで“見える化”できる。電源の遠隔オン/オフも可能。
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 節電のソリューションで共通しているのは“見える化”の重要性だ。管理者の省エネ計画策定のデータとして使えるのに加え、社員自身が“やらされる”という意識を変えていくことにつながるという。「実際、ある部署が昼休みの節電で大きな効果を上げているのを見て、うちもやらなければという自発的な意識が広がった」(キヤノンITソリューションズ システムマネジメント事業部 IDCサービス商品企画課 担当課長の船越宗男氏)という(図3)。

図3●キヤノン本社のオフィスビルでフロアごとの消費電力を“見える化”した例
図3●キヤノン本社のオフィスビルでフロアごとの消費電力を“見える化”した例
特定のフロアが大きな成果を上げる結果を見て、他フロアの社員の意識が向上したという。
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 パソコンをシンクライアントに切り替えるという選択肢もある。シンクライアントは、端末側では必要最小限の処理にとどめ、大部分の処理やデータ保存をサーバー側で実行するシステムで、消費電力が小さくなる(図4)。

図4●シンクライアントに置き換えて消費電力を4分の1に
図4●シンクライアントに置き換えて消費電力を4分の1に
パソコンをシンクライアント+サーバーに置き換えると大幅な節電ができる。節電効果は日本ヒューレット・パッカードの資料による。昼間の稼働時の電力を約6分の1にできた。サーバーを夜間や休日稼働させる電力を加えても、年間の消費電力は約4分の1になった。
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 さらに、サーバーを遠隔地のデータセンターに置けば停電リスク対策にもなる。そのため、「事業継続と節電を両立したいという顧客を中心に、引き合いは従来の3倍に増えている」(日本ヒューレット・パッカード クライアントソリューション本部 RCS製品部 プロダクトマネージャの岡宣明氏)。