サーバーの消費電力を抑える方法には主に、(1)サーバーの置き換え、(2)仮想化の利用、(3)クラウドサービスの利用---がある。

 サーバーの置き換えで省電力化に成功したのがカブドットコム証券だ。「夏場に電力需要が供給力を上回る可能性が出たことを受け、3月末にはサーバーの新機種へのリプレースを決断した」(カブドットコム証券 執行役 事務・システム本部長兼システム部長の阿部吉伸氏)---。

 置き換えたのは、顧客情報を管理するデータベースサーバーや、Webサーバー、アプリケーションサーバー。サーバーの消費電力を従来と比べて約半分に抑えた(図1)。これはデータセンターで利用している各種機器が消費する電力の15%程度に相当する。サーバーの消費電力が低くなったことで空調にかかる電力も減らせるため、データセンター全体で17.7%削減できるという。

図1●サーバーの置き換えで消費電力を約半分に削減したカブドットコム証券
図1●サーバーの置き換えで消費電力を約半分に削減したカブドットコム証券
カブドットコム証券は2011年4月から5月にかけてサーバーを最新機種に置き換えた。これにより、データベースサーバーやアプリケーションサーバーの消費電力を、50.8kW(31.8kW+19kW)から26.5kW(14.5kW+12kW)と約半分にした。これは、サーバーやネットワーク機器などデータセンターで使っていた総消費電力(2010年7月から9月の平均)の約15%に相当する。
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置き換えだけで半減

 数年前の機種と最新機種の消費電力を比べると、最新機種は消費電力を大幅に抑えている(図2)。低電圧で動作するCPUやメモリーの利用、変換効率の高い「80 PLUS」対応の電源ユニットの利用、冷却効率の改善によるファンにかかる電力の低減、などによるものだ。この傾向はどのメーカーでも大きく変わらない。

図2●新機種ほど消費電力は低い
図2●新機種ほど消費電力は低い
最新機種では、低消費電力のCPUやメモリーの利用、変換効率の高い電源ユニットの利用などで低消費電力化を進めている。しかも、CPUの進化などにより処理性能は高くなっている。この傾向は、メーカーを問わず大きく変わらない。図は富士通のラックマウント型サーバー「RX200シリーズ」を例にした旧機種と新機種の消費電力の差(同社シミュレーション値)。
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 しかも、CPUの高速化により処理性能は確実に高まっている。実際、カブドットコム証券のデータベースサーバーは、以前のCPU使用率が50~60%だったのに対し、置き換え後は10%と低い。同社は、今後のユーザー増を想定し、性能の高いサーバーを導入した。ただし、旧サーバーと同じアプリケーションを、同程度の負荷で動かすなら、より性能の低い、つまり消費電力の低いサーバーを選ぶこともできる。

 一方、最近入れ替えたばかりというユーザーの場合、サーバーの機能をうまく使えば消費電力を抑えることが可能だ。ここ2年ほどの間に発売された機種には、処理性能を制限する代わりに消費電力を抑える機能を備えているものが多い。さらに、消費電力が指定値を超えないよう、CPUの動作周波数を抑える機能を備える機種も増えている(図3)。このほか、Windows Server 2008 R2は、負荷の低いときに1つのCPUコアに処理を集中させ、他のコアへの給電を止める機能を備えている。

図3●消費電力を一定値以上にさせない
図3●消費電力を一定値以上にさせない
消費電力が指定値を超えそうになると、CPUの動作周波数を落として消費電力を抑える機能を備えるサーバーが増えている。
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