by Gartner
キャロル・ローズウェル VP兼最上級アナリスト
志賀 嘉津士 リサーチディレクター

 企業におけるコラボレーション(協業)の取り組みが失敗するのは、システム部門が誤解をしているからだと、ガートナーは考えている。コラボレーションにまつわる五つの誤解を紹介する。

誤解1:良いツールさえあれば、コラボレーションが実現する

 ソーシャルソフトウエアなどのツールは、コラボレーションを成功に導くための一要素に過ぎない。それ以外にも、「参加者の役割」や「業務プロセスの変革」「効果測定指標」「社風」などを考慮する必要がある。特に、コラボレーションの範囲が全社にまたがるような場合は、ツールよりも、業務プロセスの改革や、コラボレーションを阻害する中央集権型の社風を刷新することが重要になる。

誤解2:コラボレーションは本質的に良いものである

 コラボレーションは、手段であって目的ではない。現実のビジネス課題を解消できないコラボレーションはやるだけ無駄だ。適切な効果測定が欠かせない。研究開発部門であれば製品投入期間の短縮、製造部門であれば品質向上、営業部門であれば成約率向上などが、効果を測る上での指標となる。

誤解3:コラボレーションには追加の時間が必要

 コラボレーションのために専用のツールを導入すると、ユーザーは作業を中断して使用するアプリケーションを切り替えたり、業務アプリケーションからコラボレーション用ツールにデータをコピー&ペーストしたりしなければならず、余計な作業や時間が発生する。専用ツールの導入は正しいやり方ではない。

 コラボレーション用ツールは、ユーザーが必ず利用する業務アプリケーションと統合し、ユーザーの作業を中断しないように配慮する必要がある。

誤解4:人々は自然にコラボレーションをする/しない

 システム部門リーダーのなかには、「従業員は状況にかかわらず、自発的にコラボレーションをしてくれる」と信じている人もいれば、「従業員は強制したり何らかの報酬を与えたりしなければ、コラボレーションはしてくれない」と考えている人もいる。

 現実はもっと複雑だ。行動心理学の見地によれば、コラボレーションに関する従業員のタイプは、以下の三つに分類できるという。他人を助けてあげたり知識を共有したりすることに喜びを感じる「クマバチ型」、他人と一緒に働くことを本能的に好まない「一匹オオカミ型」、状況に応じて態度が変わる「タツノオトシゴ型」だ。

 クマバチ型は放っておいてもコラボレーションをするし、一匹オオカミ型にコラボレーションを強いると生産性が落ちてしまう。これらの二つのタイプに、システム部門が何らかの働きかけをするのは時間の無駄である。

 タツノオトシゴ型を動かすためには、まずは社風を変える必要がある。中央集権型の組織では、コラボレーションはうまく進まない。分散型の意思決定ができる組織を目指すべきだ。

誤解5:人々は本能的にコラボレーションのやり方を知っている

 コラボレーションを円滑に進めるためには、会議に参加する際の態度や、他人の意見の聞き方などにノウハウが必要だ。従業員にはツールの使い方だけでなく、コミュニケーションのノウハウも教育するのが望ましい。