「Twitterはブルーオーシャンのメディアだと考えた」。東急ハンズの長谷川秀樹IT企画部長・通販事業部長は、Twitterを始めたきっかけをこう説明する。東急ハンズはTwitter活用先進企業の1社だ。Twitterで商品やイベントの情報を提供するほか、Twitterを利用した在庫検索サービス「コレカモ.net」や、Twitter上で顧客とポイント付与の交渉をする「おねだりツイート」など、ユニークな施策を次々と打ち出している。

 東急ハンズが「@TokyuHands」のアカウントを取得して、Twitterで商品情報やイベント情報を発信し始めたのは2009年7月。今ではTwitterで情報発信する企業は数え切れないほど増えたが、当時はTwitterのアカウントを持つ日本企業は少なかった。「企業としての利用が少ない状況でTwitterを始めれば目立つ。ブランディング効果が高いと考えた」と長谷川部長は振り返る。

 ウェブ上のTwitterでも、対面サービスのように接客することを狙った。東急ハンズはTwitterを店頭、電子メール、電話といった顧客との接点の1つと位置付けた。新しく登場したウェブサービスだからといって特別に考えるのではなく、店頭で店員に話かけるのと同じ雰囲気を作ることを心がけている。

 そのため、店頭と同じ接客マニュアルをTwitterにも適用している。フォロワーの中には、毎日のように@TokyuHandsに話しかける“常連”がいる。店頭で店員が顔なじみの客に親しく話しかけるのと同様に、Twitterでも毎日やりとりする相手には親しみを込めて接する。

 @TokyuHandsが「おはようございます」と挨拶すると、10人以上のフォロワーが「おはよー」と返す。@TokyuHandsもそれに対して「おはよーございまーす」と返信するといったやり取りがある。@TokyuHandsの月間のツイート数は約2000に上る(図1)。

図1●商品やキャンペーンの紹介、消費者との質疑応答など1カ月間のツイート数は2000以上になる
図1●商品やキャンペーンの紹介、消費者との質疑応答など1カ月間のツイート数は2000以上になる

 こうした方針が奏功し、@TokyuHandsには現在、約1万5000のフォロワーがいる。東急ハンズがTwitterで発する情報を確認したいというファンを1年で、それだけ獲得したことになる。

 Twitterでは、フォローされたらフォローをし返す利用者が多い。フォロワーを増やしたければ、ハンズの利用者になりそうなTwitter利用者を探してフォローすれば、手っ取り早くフォロー数は伸びる。だが東急ハンズはそうはしていない。「東急ハンズに本当に興味を持つ顧客の獲得を目指している」(長谷川部長)からだ。

つぶやきに反応し、在庫を自動検索

 @TokyuHandsのアカウントでファンを増やすとともに、東急ハンズがTwitterを活用して提供しているサービスがコレカモ.netだ(図2)。コレカモ.netのTwitterアカウント「@korekamo」あてに、顧客が探している商品の概要をつぶやくと、「コレカモさん」というカモをモチーフにしたキャラクターが、該当する商品の簡単な説明と価格、店頭での在庫を教えてくれる。開始から4カ月間で約4万件の利用があった。

図2●在庫検索サービス「コレカモ.net」の投稿内容
図2●在庫検索サービス「コレカモ.net」の投稿内容
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