重要な性能やスペックで競合他社が数年かかっても追いつけない際立った特徴を持つ─。コマツではこれを「ダントツ商品」と呼ぶ。この名づけ親こそ、コマツ会長である著者だ。今や世界中の拠点で通じる「dantotsu」には明確な定義があり、「旧来品に比べ原価を10%以上引き下げ、そのコスト余力をダントツの実現に振り向ける」。さらにキーワードとして「環境」「安全性」「ICT」が加わる。

 その実現例として紹介されているのがハイブリッド建機だ。本体価格は高いが燃費を大幅に削減できるため、中国で人気に火がついた。本書の多くがコマツの中国での躍進に当てられているのは偶然ではない。ダントツ商品を投入して中国市場を開拓できたことが「ダントツ経営」の最たる成果だと考えられる。

 ICTでは建機の稼働状況を無線で見える化した「コムトラックス」にも触れる。これも反響が大きかったのは中国だった。興味深いのは、割高になるコムトラックスを著者の判断で標準装備にした話。当初は「お客様のためとは思わず、メーカーであるコマツのため」と割り切ったという。自社の強みを磨くダントツ経営の一端が垣間見られる。

ダントツ経営

ダントツ経営
坂根 正弘著
日本経済新聞出版社発行
1785円(税込)