無線LANで重要なのは、無線区間できちんと性能を出すことと、セキュリティを確保することである。そのために見える化が必要になる。

 最近は様々な機器が無線LANに対応し、モバイルルーターのように知らないうちに移動してエリアに入ってくるアクセスポイント(AP)がある。このため、干渉によって電波環境が変化しやすい。そうでなくても無線LANは外来波の影響を受けやすく、MIMO対応のAPはアンテナの向きなどにも敏感。電波状況の見える化は欠かせない。

 可視化して把握すべきことを整理してみると図3-1のようになる。まず安定した接続環境を保つために、APからの電波の到達範囲と電波干渉の状態を押さえておく。トラブルシューティングを正確かつ迅速にするために、ユーザーが接続していた場所とトラブルに遭遇した場所をトラッキングできるようにしておくことが望ましい。セキュリティ対策の観点からは、無線LANに接続している端末、LANにつながっている不正なAPの有無、そして接続しているユーザーのアクセス権を把握したい。

図3-1●無線LANの運用に際して見える化が必要なこと
図3-1●無線LANの運用に際して見える化が必要なこと
ケーブルがないため、接続している端末、ユーザー、場所などが見えにくい。これらをきちんと可視化することが、トラブルが少なく、セキュリティリスクが小さい状態で運用するために必要となる。
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フリーツールで現在の状況がわかる

 無線LANの管理については、ベンダーがそれぞれ専用ツールを提供している。ただ監視・管理する内容によっては、フリーのツールで済ませることもできる。例えば、その場の電波環境ならフリーツールでチェックできる。

図3-2●米メタギークが配布するフリーの無線LAN可視化ツール「inSSIDer」
図3-2●米メタギークが配布するフリーの無線LAN可視化ツール「inSSIDer」
インストールしたパソコンで捕捉できる無線LAN APの一覧とそれぞれの電波強度、セキュリティ方式などを表示する。
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 これに対して、無線LAN接続しているユーザーや端末を把握したい、接続場所などをビジュアルに表示したい、あるいは電波状況などを過去にさかのぼって把握したいとなると、商用ツールが必要になる。各ツールがどこまで可視化できるかを押さえ、適材適所で使い分けることがポイントだ。

 自社の無線LANの状態が全く分からなかったら、まずは今いる場所で自社のAPからどれだけの強さの電波を受けられるか、あるいは近隣に何台くらいAPがあるかを確認してみるといいだろう。ユニアデックスの片澤友浩ビジネスイノベーション統括部プラットフォームソリューション部グループマネージャーは、こうした用途で使えるフリーツールとして「NetStumbler」と「inSSIDer」を挙げる。NetStumblerとinSSIDerは、周囲にあるAPとその電波強度などを調べられる。inSSIDerはその場で電波を捕捉できるAPの一覧と電波の強さ、セキュリティ方式などを表示する(図3-2)。