業績見通しは減収でも、ICT投資は増やす、あるいはICT総投資は仮に減らしても災害対策分野には投資する――。2011年度のICT投資額は、災害対策関連を中心に増やそうというマインドが優勢である。

 日経BPコンサルティングが、企業の情報システム部門や経営系部門の勤務者を対象に5月に「ポスト3.11時代のICT利用意識調査」を実施したところ、2011年3月11日の東日本大震災が、企業のICT投資姿勢に量と内容の両面で影響を与えたことが浮かび上がった。本連載の第2回では、こうした企業のICT投資姿勢の変化について、同調査結果に基づいて分析する。

4割程度のICT投資意識が変化、システム被害が無くても

 大震災によりICT投資に対する意識が「変わった」とする回答は、情報システム部門で43.5%に上った(図1、「大きく変わった」+「やや変わった」の合計)。システムに何らかの問題が発生した回答者に限ると、意識の変化は過半数に上る。サーバーが損壊する被害を受けた回答者では、さらに「大きく変わった」が増加する。

図1●大震災を受けてのICT投資に対する考え方の変化
図1●大震災を受けてのICT投資に対する考え方の変化

 一方で、システムに問題が生じなかった回答者においても37.2%の意識が変わった。大震災は、直接のシステム被害等を免れた企業においても、ICTの在り方と投資について少なからず考え直す機会になった。

2011年度ICT投資は「増加」が「減少」を上回る

 ICT投資に対する変化は、大きく「量」と「内容」に分かれる。量、つまり2011年度のICT投資額は、大震災を受けて以前の計画より「増加」するという情報システム部門の回答者が22.1%に上り、「減少」(14.0%)よりも多かった(図2)。

図2●大震災を受けての2011年度ICT投資額の増減見通し
図2●大震災を受けての2011年度ICT投資額の増減見通し

 ICT投資を増やすという回答は、震災で「ICT投資に対する意識が変わった」という人に多い。意識が変わった人は、回答者全体平均より16ポイント多い38.4%が投資を増やすとした。この回答群では、投資減と見る人は16.6%で、全体平均を数ポイント上回る程度である。この結果から判断すると、「ICT投資に対する意識が変化」することは「ICT投資を強化(増やす)」することにつながっている。

 ICT投資額を増やすのは、システムの被害への対応や災害対策強化が必要と感じたためと考えられる。そう推測できるのは、2011年度の会社の業績見通しとICT投資マインドとの関係性がそれほど強くないためだ。

 2011年度の業績見通しは、大震災の影響で「減収」と答えた回答者が「増収」より多い。それにもかかわらず、減収見通しの回答者に限っても、ICT投資については「増加」と「減少」が拮抗している。

 本連載では原則として情報システム部門の回答を分析して紹介しているが、同調査で尋ねた経営系部門の回答では、「業績が減収見通しでもICT投資は増える」が23.8%と、「ICT投資が減少」の2倍に上った。この数字を見る限り、情報システム部門に比べて経営系部門では投資増の意向がさらに強い。