情報システム担当者の過半数は「電力規制の影響が大きい」一方で、「省電力対策の効果が分からない、時間が間に合わない」などと感じている――。そんな実態が日経BPコンサルティングが2011年5月に実施した「ポスト3.11時代のICT利用意識調査」で明らかになった。情報システム担当者は本格的な対策を実行できないまま、暫定措置で節電の夏を迎えつつあるようだ。

 同調査の調査対象は情報システム部門(回答数705件)と経営系部門の勤務者(回答数310件)。5月17日~23日に、東日本大震災後のICTの方向性、意識の変化を尋ねた。設問項目はICTに対する基本方針や投資額、BCP(事業継続計画)、電力規制対応、ワークスタイルの変化などである。

 本連載ではこの調査結果の中から、主に情報システム担当者の回答を分析していく。第1回は、今夏の重要課題、電力規制に対する情報システム部門の対応を取り上げる。

過半数に電力規制の影響、大企業では3分の2に

 2011年夏の電力規制が勤務先のICTに影響を与えるとした情報システム部門回答者は、「非常に」と「やや」合計で55.3%に上った(図1)。「まったく影響を与えない」は10.4%にすぎなかった。本調査後の6月10日に関西電力も15%の節電要請を発表したことから、7月現在はさらに多くの企業に影響を与えていると見てよいだろう。

図1●2011年夏の電力規制が勤務先のICTに与える影響度
図1●2011年夏の電力規制が勤務先のICTに与える影響度

 この設問では、従業者1000人以上の大企業に限ると66.1%が影響ありと答えた(「非常に」+「やや」の合計)。大企業で影響が大きいとされている理由は、大企業ほど東日本に拠点を持つ比率が大きいことと、4月の段階から大口需要家を中心に規制される可能性などが報道されたためだろう。

 業種で見ると、金融業のほか、素材メーカー系の製造業、通信、情報処理サービス、電気・ガス・水道といったインフラ系業種での影響度が強い。流通業では、影響が大きいとの回答は相対的に少なかった。

過半数は6月メドだが、「7月以降」「2012・2013年にかけて対策」との回答も

 今回の調査では、3月11日後のICT対応を3つに分け、それぞれのメドを尋ねている。その3つとは、(1)被害を受けた拠点のICT機器やシステムの復旧、(2)今夏に予定されている電力規制へのICT対応、ICTの省電力対策、(3)今後のICTの在り方に対する見直し――だ。

 (2)電力規制への対応や省電力対策については「必要がある」と考えた企業の過半数が「6月まで」をメドとした。ただし「7月以降」あるいは「来年・再来年にかけて」との回答もあった。

 ここからは、「本格的な省電力対策は、短期間で完了できない」という本音も透けて見える。実際、自由意見では「目前の目標としては、夏前をリミットとしなければならず、時間的制約が大きい」(流通業、従業者1000-2999人規模)とのコメントがあった。