百戦錬磨のプロジェクトマネジャーの多くは、数々の難題が待ち受ける複数のプロジェクトを効率良く管理するために、Excelを使いこなすワザを持つ。連載「プロマネが明かすExcel活用ワザ」の最終回は、データの集計・分析に役立つワザを紹介。(1)プロジェクトの計画と実績のズレを自動的に把握、(2)プロジェクト進行中に発生する数々の障害への対応状況を自動的に把握、(3)新規プロジェクトの工数をできるだけ正確に見積もる――の3ケースでの集計・分析ワザを披露する。連載第1~2回で紹介したワザよりも高度だが、使いこなせれば業務効率は大幅に向上するはずだ。

【データの集計・分析に役立つワザ】 集計関数や回帰分析でデータ活用

 Excelを使えば、プロジェクトの実績データは容易に蓄積できる。しかし、ただ蓄積しただけではもったいない。集めたデータをグラフにまとめたり、統計計算をしたりすることで分析に役立てたい。分析ツールを別途用意しなくても、Excelには、データを集計する関数や、統計分析を行う機能などが備わっている。

 今回(本連載の第3回)は、実際にそれらの機能を活用してプロジェクトの作業実績や障害報告の分析を行ったり、過去の実績データを工数見積もりに活用したりしている例を紹介しよう。

リアルタイムに計画と実績のズレをつかむ

図1●「DCOUNT(ディーカウント)関数」や「グラフ」機能を使って自動作成している作業分析資料
図1●「DCOUNT(ディーカウント)関数」や「グラフ」機能を使って自動作成している作業分析資料
SRAの山田行久さんは、大規模プロジェクトのテスト作業の進捗データを、DCOUNT関数を使って集計してグラフ表示し、計画や実績の変動をチェックしている。
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 システムインテグレータであるSRA(東京都豊島区)の山田行久さん(産業開発統括本部 流通・基幹システム部 アカウント マネージャ)は、システム開発プロジェクトの機能テスト工程で、作業が計画通りに進んでいるかどうかを調べるため、メンバーがExcelに入力したデータを基に、計画や実績の集計処理からグラフ作成までを自動化させている(図1)。

 山田さんが担当するプロジェクトでは、テスト対象の機能数が数百におよぶことが少なくない。グラフ作成までを自動化することで「リアルタイムに計画と実績のズレをつかめるので、遅延したときの対策の判断もすぐに下せる」と山田さんはメリットを話す。

 テストの実施状況や結果を把握するため、山田さんは「進捗シート」という表をExcelで作成し、そのファイルを現場のサーバー上に公開。プロジェクトに参画するメンバーがそれぞれ、進捗シートに担当部分の計画や実績を入力するようにしている。

 進捗シートは、テスト対象の機能一つひとつを表の1行で管理するようレイアウトされている。管理するのは「試験ケース設定(テストケース設定とも呼ぶ。プログラムが正しく動作するか試すための条件や項目を決めること)」「テスト実施」「受入」という三つの作業で、メンバーは、それぞれの作業の「開始予定」「終了予定」「(作業の)達成率」といった項目を実態に合わせて入力する。そして、各メンバーが入力したデータを基に、テスト予定の機能数(計画値)、実際にテストをこなした機能数(実績値)を集計する。

自動集計に便利な2つの関数を活用

 計画値と実績値を自動集計するのに、山田さんはExcelの関数「DCOUNT(ディーカウント)」を活用している。DCOUNTは、複数の条件を満たすセルを数える関数だ。

 例えば、試験ケース作成の計画値を数えるときには、「進捗シートに入力された終了予定日の値が、進捗を確認する日付の値以下」かつ「入力された達成率の値がゼロ以上100%以下」といった条件を設定。これらの条件を満たすセルを進捗シートからDCOUNT関数で数える。これにより、進捗確認日までに試験ケース作成に着手することになっている機能数を集計し、折れ線グラフに反映させる。

 設定した条件を満たすデータを集計する関数は、DCOUNT以外にもいろいろあるので活用したい。例えば山田さんは、メンバーの工数管理にもExcelの関数を使い、自動集計している。それは「SUMIF(サムイフ)」関数で、メンバーの名前を条件にして工数を集計するのだ。SUMIFは、指定した条件に一致するセルの値を合算する関数である。メンバーが複数のプロジェクトをかけ持ちしているような場合、プロジェクトごとに別々の工数管理表から、各メンバーの工数を集計することもできる。