従来の日系企業中心の販売から、現地企業を中心に製品を売り込む海外戦略にシフトしたサイボウズ。中国の現地企業向け市場の開拓はまだ手探りとするが、2012年中にもクラウド型のサービスを中国で開始し攻勢をかける計画。このほど、北米市場にも再参入した。中国に加え、北米でもグループウエアなど主力製品の販売強化を急ぐサイボウズの青野社長に今後の展開を聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ



サイボウズの青野社長
サイボウズの青野社長

中国市場でも現地企業の開拓を強化している。

 中国は人脈をかなり重要視するなど、日本や欧米とは商習慣が大きく異なるので売り方が難しい。しかも、スケジュール管理をする習慣が中国でも企業でも浸透していないので、主力のグループウエア製品を販売するにはまず、グループウエアを使う習慣から啓蒙していく必要がある。

 その一環として、セミナーを定期的に現地企業向けに開催している。このほか、かなり手探りの啓蒙活動だが、個人向けのスケジュール管理サービス「スマートカレンダー」を2011年1月から、中国で無償提供し始めた。

 これは、上海の現地法人の中国人社員が企画して開発したもの。中国の人が好む画面デザインや使い勝手にしてある。ネット上にスケジュールを登録して自分で管理したり、他の人と共有できたりできるサービスで、これを使いながらスケジュールを管理することに慣れてもらえればと考えている。

 同サービスは既に6万ユーザーを獲得しており、もっと利用者が増えてくれば広告ビジネスをこのサイト状で展開できるかもしれないと考えている。

中国市場でのクラウドサービスの展開についてはどう考えるか?

 クラウド型の中小企業向けグループウエア「Cybozu Benko System」は従来から提供しているが、大企業向けのガルーンシリーズもクラウドで展開しようと考えている。

 これまでは日本でも、クラウド型のサービスはパートナー経由でしか提供してこなかった。まず日本で今秋から、グループウエアやWebデータベースなど、パッケージで提供してきたソフトを、クラウドで提供し始める。パートナー経由ではなく、サイボウズ自らがクラウドサービスを展開するのはこれが初めてとなる。

 その後、2012年に中国や米国でも、自社製品のクラウドサービスを展開する計画で、現地企業へ積極的に売り込みたい。パッケージ型での販売だと、現地での導入やトラブル対応などのためパートナー企業が必要だが、クラウドであれば直販で売り込める利点がある。

2011年6月に、北米市場にも再参入した。

 日本マイクロソフトとの提携戦略の一環だ。提携により、マイクロソフトの「SharePoint Server」と組み合わせて使う方式でサイボウズのグループウエアを販売し始めている。英語対応など海外でも使える機能を搭載した新バージョン「Cybozu SP Apps 2010」を開発し2011年6月に国内外で発売。米国市場への再参入を決めた。

 2012年1月末までに、国内では55社、北米では40社以上へ販売するのが目標だ。北米での目標数は日系企業ではなく、基本的に現地企業への販売を想定している。

 北米では、ネット経由での直販で売り込む。SharePointの機能を拡張し、連携できるグループウエアとして販売するので、基本的には大手から中堅企業が対象となる。米国では中小企業でもSharePointを導入している企業が多いので、販売する企業規模の幅はかなり広くなる可能性がある。

最初に北米市場に参入したときの敗因をどう分析しているか?

 2001年にサンフランシスコに現地法人を設立し北米市場に参入した。うまくいかなかった原因は、情報共有の文化の違い、技術レベルの違い、資金力の三つだと考えている。

 特に、文化の違いは大きかった。情報共有に対する文化の違いで、個人主義が強い米国では、グループウエアによるスケジュール管理は個人のスケジュール管理に重きを置く。上司や同僚と広くスケジュールを共有する日本的なスケジュール管理に優れたサイボウズの製品は文化的に合わなかった。米国の文化に合った機能を持つ、競合のグループウエア製品にはかなわなかった。

 当時は会社の規模が小さかったので、人材における技術力でも劣っており機能追加で差が出た。結局、米国での売上規模は年間で約4000万円程度まで伸びたが、そのあとは伸ばせないまま赤字が続いた。ベンチャーなので資金面でも厳しくなり、2005年に現地法人を清算することになった。

 これらの反省を踏まえ、北米や欧州市場は単独で攻めるのではなく提携を通じて出ていくべきと考えた。