アビーム コンサルティング
プロセス&テクノロジー事業部 マネージャー
小宮 伸一

 本連載では、情報システム部門(IT部門)が「IFRS(国際会計基準)対策」を能動的に進めるにはどうすべきなのかを中心に解説している。前回(IFRSによる業務系アプリケーションへの影響(上))は業務系アプリケーションのうち、販売管理システムと購買管理システムに対する影響と対策について説明した。

 今回は物流管理システム、研究開発管理システム、生産管理システム、輸出入管理システムに対する影響と対策を取り上げる。業務アプリケーションの全体像については、前回の図1をご覧いただきたい。

物流管理システムへの影響と対策案

 物流管理システムは、在庫管理、配送管理などの機能を有するシステムを指す。前回説明した販売管理システムや購買管理システムと連動しているので、物流管理システムへのIFRSの影響を分析する際はまず、販売・購買管理システムに対するIFRSの影響に着目する必要がある。

 販売管理システムで売上計上のタイミングを出荷時点から着荷・検収時点へと変更したとする。この場合、会計上の在庫引き落としのタイミングについても出荷時点ではなく、着荷・検収時点に変更する必要がある。

 一方で業務運用上、販売可能在庫数を管理するためには、遅くとも出荷時点までに在庫を引き落としておきたい。つまり、在庫引き落としのタイミングに関しては、会計上の要件と業務上の要件が異なることになる。これに対応するには、出荷時点と着荷・検収時点、およびその間の移動在庫を、財務会計上の在庫とは別に管理する仕組みが必要になる(図1)。

図1●移動在庫の管理
図1●移動在庫の管理

 本格的に対応しようとすると、出荷時点で倉庫在庫から移動在庫に振り替え、着荷・検収時点で移動在庫からの引き落としを行う必要がある。一方、もっと簡便な対策も考えられる。売上や在庫はこれまで通り出荷基準で処理しておき、決算時に先方未着荷・未検収分、または未着荷・未検収と推定される取引を抽出して、売上、売掛金、売上原価、在庫の各金額を決算調整として修正する、といった方法である。