東日本大震災以降、通信事業者などはデータセンター設備の増強を急ピッチで進めている。災害に対して安全なサーバーの運用環境を求めるユーザーが急増しているからだ。
そもそもデータセンター設備は、需要を見越して計画的に建設していくもの。ところが急に需要が増加したために容量がひっ迫している。「震災前と震災後ではデータセンターに関する問い合わせの件数は3倍に増えた。特に関西地域では計画を前倒す必要が出てきそうだ」(NTTコミュニケーションズの深村有史・ITマネジメントサービス事業部アウトソーシングプラットフォーム部DCプラットフォーム部門担当部長)という。
こうした中、IIJとNTTコムが同時期に、全く対照的な性格を持ったデータセンターを開設した。IIJが開設した「松江データセンターパーク」は、工場でサーバーをラックに収容してそれごと詰め込んだ「コンテナ型データセンター」(写真1)。
一方、NTTコムが建設したのはいわゆる「都市型データセンター」で、東京・大手町から公共交通機関で数分という立地にある高さ90m、16階建て専用ビルである。
センターの特徴見極めが重要に
二つのデータセンターの特徴は当然違う。収容するシステムの種類に合わせて使い方を見極め、選択する必要がある。
IIJのセンター内は、ほとんど人が入って作業するスペースはなく、特殊な大きさのストレージやアプライアンスなどの設置を想定していない(写真2)。仮想化サーバーの稼働に最適化した設計といえる。サーバーの集積度が高く、省電力なため提供コストも下げられる。
NTTコムのセンターは、作業に入ったスタッフを確認する受け付けや、生体認証、一度に一人以上が通り抜けられないゲートなど、人に対するセキュリティが厳重で、サーバー設置スペースも、用途ごとに特化したハードウエアを設置できるようになっている(写真3、写真4)。
どちらも電源や自家発電機、空調などは予備機を用意する専用構成。サーバーの安定稼働に関する性能に大きな差はないと考えてよい。