停電が発生すると、サーバーと同様にネットワーク機器が停止する。サーバーと違うのは、社内のネットワーク機器は外部には委託できないこと。停電の場合、影響が遠隔地にまで及ぶことも考慮しなくてはならない。

 例えば、複数の拠点を結ぶネットワークを構築している場合、ネットワークの構成によっては、いくつかの拠点を経由して通信することになる。このとき、経路上の拠点で停電が発生すると、ネットワークが分断されかねない。そこで考えたいのが、他の拠点を経由した代替ルートを即座に設定できるような、分散型のネットワーク構成を取ることである。

 また、データセンターなどにサーバーを集約していても、そこへ接続する各拠点のルーターなど通信手段は拠点内からなくせない。「ネットワーク機器は電源を確保する対象として何よりも優先すべきもの」(ベライゾン ビジネスの生田隆由テクニカルソリューション本部副本部長)である。できるだけ、ネットワーク機器を中心にUPSなどを利用する事を考えるべきだ。

適材適所の複数契約が逆に確認の障害に

 半導体商社のインターニックスは、本社を中心に構成していたスター型の国内ネットワークを今夏までに変更する計画だ。本社の通信機能が停止すると、関西地区の他の拠点の業務に影響するという課題が浮かび上がったからである(図1)。

図1●インターニックスは本社の停電などに備えてネットワーク構成を見直し
図1●インターニックスは本社の停電などに備えてネットワーク構成を見直し
現状は本社を中心とするスター型のネットワークで、本社のネットワークが止まると全社的に物流システムを利用できなくなる。新宿の高層ビルに入居する本社では災害・停電対策が不十分と判断し、ヴェクタントのIP-VPNを使ったメッシュ構成に移行する計画。
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 現行のネットワークは「各拠点間を接続するのに最もコストパフォーマンスが高いインフラを使う」(伊藤康夫業務支援部情報システム課課長)という方針に基づいて構築。結果として、様々な事業者の回線を本社に引き込んで、全体の中心となる形を取っていた。各営業拠点から見ると、サーバーやインターネットへ接続するのに必ず本社を経由する形になる。

 「計画停電の際は本社は対象エリアから外れていたので問題は起こらなかった。だが本震では本社ビルの建屋が大きく揺れた。電力だけでなく通信機器などの安全性も考えると、本社の機能停止を前提に、各拠点で業務を継続できるようにしたい」(伊藤課長)

 本震後の翌週初日となる3月14日には交通機関のマヒで、本社のシステム部門は社員が1人しか出社できなかった。「多くの通信事業者のサービスを使い分けていたため、計画停電による影響をそれぞれの事業者に確認するだけで丸1日以上かかってしまった」(同)。こうした反省から各拠点の業務継続に必要な通信インフラをまとめ、ワンストップで確認できるようにする。

 具体的には、八王子拠点の物流系サーバーをヴェクタントのIP-VPNに接続。さらに本社内で運用していたグループウエアサーバーは、ヴェクタントのハウジングサービスに移設する。これによって本社以外の各拠点では、IP-VPNさえ使えれば最低限の事業継続が可能になる。この程度の回線開通程度の工事であれば、無理なく1~2カ月の間に完了できる。