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 検証(6)では、ネットワーク転送の性能を調べた。KVMではゲスト環境のネットワークとして、NAT構成にするか、ブリッジ構成にするかを選べる。この検証では、ゲスト環境と外部サーバーが直接IPで通信でき、性能面で優位なブリッジ構成とした。また、外部サーバーと検証機(PowerEdge R810)はスイッチを介さず1Gビット/秒のNIC同士を直接接続した。

図7●KVMのネットワーク転送性能
図7●KVMのネットワーク転送性能
ブリッジ構成で、データ転送性能を調べた
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 ネットワークのベンチマークツールである「netperf 2.4.5」を使用し、外部サーバーからホスト環境とゲスト環境に向けた、ネットワーク転送のスループットを計測した。その結果を図7に示す。KVMのオーバーヘッドは2.5%とわずかだった。

 以上、検証(3)~(6)の要素テストから、MySQLを用いた検証(1)でホスト環境とゲスト環境の性能に開きが生じた理由、すなわちKVMのオーバーヘッドの主たる原因は、メモリーアクセスとディスク書き込みの遅延にあると推察される。

著者から
今後の普及と機能強化が楽しみ、一般的な使い方ならより良い結果に
濱野 司 (はまの つかさ)氏

濱野 司 (はまの つかさ)氏
オープンソース・ソリューション・テクノロジ
技術部 プリンシパル・エンジニア

 KVMは、Linuxカーネルに標準のローダブルモジュールとして組み込まれているので、各種Linuxディストリビューションで利用できる。このため、急速な普及が見込まれる。また、機能拡張などの保守開発がオープンソースで活発に進められているので、今後の発展が楽しみである。

 東日本大震災により、東京電力や東北電力の管内では今夏、ピーク時の消費電力削減が大きな課題になっている。業務サーバーの集約による省電力化が急務というサーバー管理者の方も多数いらっしゃることだろう。もし、これから仮想化に取り掛かるのであれば、仮想化ソフトの選択肢の一つにKVMを加えてはいかがだろうか。

 なお、KVMはMySQLを用いたデータベース処理で40~60%のオーバーヘッドが生じたが、これは極端に悪いケースを示した。一般的な業務システムのデータベースであれば、計算などCPU処理の割合が高まるので、今回の検証結果より良くなると思われる。また、MySQLや仮想化ソフトのパラメーターチューニングにより、オーバーヘッドを大幅に縮められると考えている。