アジアの金融センターとして急成長したシンガポール。現在はバイオやICT(情報通信技術)など知識集約型産業の誘致に力を入れ、データセンターを設置する動きも相次いでいる。同国のICT市場の概況や、進出企業がシステム構築する場合に知っておくべき点を報告する。

 シンガポールは世界有数の先進国だ。国際通貨基金(IMF)によると、購買力平価ベースの個人所得は世界で4位に位置する。これは日本(24位)の約1.7倍という高い数字だ。金融とバイオをはじめとした知識集約型産業を、国家の基幹産業に据えている。

 ICTも基幹産業の一つだ。シンガポールの情報通信開発局(IDA)によると、2009年の同国におけるICT産業の市場規模は、前年比8.0%増の627億4000万シンガポールドル(約4兆円)だった。2008年秋に起きた世界的な金融危機の影響が強かった2009年を除くと、10%以上の高い成長率を維持している(図1)。同調査はハード、ソフト、ITサービス、通信サービス、コンテンツサービスを対象にしている。

図1●シンガポールのICT市場の規模と成長率<br>世界的な金融危機の影響を受けた2009年を除くと、2ケタ台の成長を続けている
図1●シンガポールのICT市場の規模と成長率
世界的な金融危機の影響を受けた2009年を除くと、2ケタ台の成長を続けている
[画像のクリックで拡大表示]

 2006年以降、輸出が6割以上を占めるなど、高い技術力で開発した製品を外国に販売するICT企業が増えている。輸出先はアジア圏が半数以上を占める。2009年のICT産業の輸出額は前年比14.6%増の404億4000万シンガポールドルだった。