運用自動化ソフト「A-AUTO」を中国市場で販売するビーエスピー(BSP)。中国の大手システム会社デジタル・チャイナと提携し販売力を強化していることに加え、西安に自前の開発拠点を設け現地開発やサポート体制の拡充も急ぐ。BSPの竹藤社長に戦略を聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ


ビーエスピーの竹藤浩樹社長
ビーエスピーの竹藤浩樹社長

海外市場への進出と撤退を繰り返している。

 二十数年前から、海外事業に挑戦し、失敗もしてきた。過去の海外進出は、まずシンガポール支店を作り、その後にニューヨーク支店を作ったが、いずれも撤退している。ここでの失敗や想定通りにいかなかった経験、うまくいった施策を整理して生かしつつ、新たに中国市場の開拓を進めている。

そこから導きだした経験則とは?

 現地企業を攻めるためには、現地の人に権限を委譲することに尽きる。加えて、現地スタッフの採用の仕方も大きなノウハウだ。どうしても日本企業は、日本人が使いやすい人を現地で選定してしまうが、それでは現地市場を開拓できない。どうしても日本市場や日本での商習慣に引っ張られて人を選んでしまうからだ。そこでBSPでは現地拠点のトップは中国人にし、現地での採用も任せるなど、かなりの権限を持たせている。

海外市場開拓の難しさをどう感じているか?

 市場や文化の違いは当然として、特に感じたのは人材管理の難しさ。米国や中国といった、離職率が高く個人主義が強い国では、コンプライアンスや企業理念の浸透などは時間がかかる。日本では重視される、仕事へのやりがいや責任感、達成感よりも、やはりお金が重視される傾向が強い。実際に上海では、せっかく育てた人材が、現状の1.5~2倍の給料を提示されて、アッサリと引き抜かれていくことがよくある。

中国では人件費高騰も問題となっている。

 沿岸部の上海だけでなく、内陸部の西安でも人件費は高騰している。特にマネジャークラスは上海と西安では変わらない。欧米企業が西安に進出しており、一気に給与水準が上がってしまった。

 ただ、上海よりも西安の方が人材の地元定着率が高いことが分かってきた。そこで、じっくり育てる必要がある技術者は、西安で採用してここで育成することにした。周辺に大学がたくさんあり優秀な技術者も確保しやすく、オフィスや住居なども上海より安い。

 そこで西安に開発拠点を新たに作った。今は日本で開発した製品を中国語対応にして売っているが、今後は西安の開発拠点で中国語化や英語化を実施し、技術サポートもここへ移管していく計画だ。将来的には、日本製を中国語化する現在のやり方も変えて、中国市場に合わせた製品を現地で作る必要がある。西安の拠点開設は、中国向けの製品をここで開発できるようにする意図もある。日本向けの製品開発のオフショア拠点としても活用したい。

中国市場での販売ではデジタル・チャイナと提携している。

 中国のIT企業は、市場が盛り上がるネタを探している。システムの大型化や複雑化に合わせて、運用自動化の需要が大きくなるとみて、BSPの製品を取り扱おうと考えたようだ。人件費の高騰は運用自動化ソフトの販売には追い風で、人手を使っていたことをシステムにやらせた方が安く正確になる。システムの巨大化や業務量の増加、人件費の高騰が進むことで、2~3年後には運用自動化の需要が中国でもかなり増えると予測している。

 デジタル・チャイナが持つ西安のデータセンターの一部システムに、BSPの運用自動化ソフトを実際に導入している。こうした稼働実績や運用状況を踏まえて顧客に提案してもらっている。今後、上海にデータセンターを持つ別の大手IT企業とも提携交渉をしており、今夏をメドに結論を出したいと考えている。OEM(相手先ブランドによる供給)提供など、様々な施策を展開する計画だ。