スマートフォンやタブレットは通信機能を備え、バッテリーで動作する。また、スマートフォンでは数インチのディスプレイ、タブレットでは10インチ程度のディスプレイが使われる。そのためきょう体サイズはディスプレイのサイズでほぼ決まってしまう。このサイズに必要なものを詰め込もうとすると、メインボードのサイズはそれほど大きくできず、厚みも数mm程度しか確保できない。つまり、回路部分をコンパクトにしなければならない。

 パソコンの場合、例えば15インチやこれを超えるサイズのディスプレイを採用し、重量も1kgを超え2kgに達するようなノートパソコンなどが販売されている。しかし、スマートフォンやタブレットでは、持ち運ぶものである以上、こうしたサイズや重量の製品はあり得ない。

 このためスマートフォンやタブレットでは、コンパクトで低消費電力のメインボードを実現できるCPUが必要になっている。もちろん、パソコンのようにCPUを冷却するための巨大なヒートシンクやファンを使うこともできないといった理由もある。

 その一方で、スマートフォンには“パソコン”並みのことが要求される。インターネットへの接続、動画や音声の再生などだ。そのため一般にスマートフォン/タブレットは、パソコンと同程度の複雑な32ビットOSを実行できなければならない。インターネット接続や音楽・動画の再生などは、既存のOSやその上のネットワークスタックなどによって実現されており、これらの仕組みを独自でゼロから作り上げるのは困難だからだ。

 前回説明したように、ほとんどのスマートフォン/タブレットはARMコアを採用しており、内部には音楽や動画を再生するためのハードウエアなどを統合している。以下ではこれらを詳しく見ていこう。