前回までは、VNEのビジネスモデルや、ネイティブ方式における各プレーヤーの役割を見てきた。今回は、ネイティブ方式を実現するための仕組みをネットワーク構成や使用するプロトコルといった側面から見ていく(注1)。

注1:ここで説明する内容は、2011年6月時点で筆者の所属するJPNEで認識している内容であり、変更される場合があることをお断りしておく

ネイティブ方式における宅内の構成

 ネイティブ方式における宅内LANおよび企業内LANの物理構成は、基本的には現在NGN上で提供される「フレッツ 光ネクスト」サービスを契約してIPv4インターネット接続を行っているエンドユーザー宅内の構成と同じである。フレッツ 光ネクストでは、一般的にエンドユーザーが「ひかり電話」を契約している場合は宅内にホームゲートウェイ(HGW)が設置され、ひかり電話を契約せずインターネット接続サービスを利用する場合はHGWが設置されない。ネイティブ方式でIPv6インターネット接続を行う場合も従来のIPv4の場合と同様で、一般にひかり電話契約の有無に連動してHGWの有無が決まる。

 エンドユーザーがネイティブ方式を契約した場合、宅内LANや企業内LANに接続したWindows Vista/7パソコンなどのIPv6対応端末(宅内端末)は、自動的にIPv6アドレスを生成しIPv6通信ができる状態となる(アドレス生成については後述する)。最近市販されているパソコンやスマートフォンの多くは、工場出荷時点で既にIPv4とIPv6の両方が有効になっている。ユーザーがネイティブ方式とトンネル方式のどちらを利用するかにかかわらず、IPv6インターネット接続サービスを契約し、これらのIPv6対応機器を購入してHGW配下の宅内LANに接続するだけで、IPv6で通信している状態となる。

 ネイティブ方式のサービスを提供する1社であるJPNEを利用するエンドユーザーの宅内にHGWが設置される場合は、NTT-NGN内の装置からHGWに対してJPNEのIPv6プレフィックス(/48)が払い出される。HGWはDHCPv6-PD(Dynamic Host Configuration Protocol - Prefix Delegation)によってこのプレフィックスを受け取り、そこからより小さいサイズのプレフィックス(/64)を一つ抽出して、宅内LANや企業内LANに再分配する。このときの再分配には、RA(Router Advertisement)を使う。つまり宅内端末は、RAで/64のプレフィックスを受信することになるが、これは128ビットで構成されるIPv6アドレスの前半部分として使われる。宅内端末は端末自身のインターフェースカード(LANカード)が持つ48ビットのMACアドレスをある決められた法則に基づいて64ビットに自動変換し、HGWから受け取った64ビットと合わせて128ビットのIPv6アドレスを組み立てる。これをEUI-64方式という。

 端末がIPv6インターネットあてにパケットを送信する際には、このIPv6アドレスが送信元アドレスとして使用される。このようなIPv6アドレス自動生成機能は、Windows VistaやWindows 7などのIPv6対応端末であれば標準で実装されている。

 NTT東西から公開されている技術参考資料には、責任分界点としてのUNI(User-Network Interface)部分、正確にはONU(Optical Network Unit)のHGW側のコネクターが規定されている。つまり、HGWが/48のプレフィックスをNTT-NGNからDHCPv6-PDにより受け取る部分が規定されている。HGWから宅内端末にプレフィックスが分配される部分を含む宅内LAN側や企業内LANの仕様は、NTT-NGNの仕様ではなく、HGWやパソコンなどの宅内端末の仕様となるため、理論上、複数の仕様が存在することが考えられる(注2)。

注2:ここでは、世界的に実績がありWindowsパソコンなど多数の端末に実装されている方式で、筆者が妥当と考えるものを紹介した。以降、宅内端末に関する記述はこれと同様である