「中国ではシステムをスクラッチ開発する文化が、今も根強く残っている」。こう説明するのは、サイボウズの林正寿グローバルビジネス部長だ。「グループウエアでさえ、スクラッチ開発している企業もある。売り急がずにパッケージ文化を啓発することから始めることが肝心」(同)。

 パッケージ利用の文化を広めるために同社が採った方法が、地道なセミナー活動である(写真3)。顧客になりそうな企業の幹部を集め、「スクラッチ開発と比較したパッケージソフトの強み」といったセミナーを行っている。即効性はないものの、こうした取り組みによって、サイボウズは3年後に2万社の顧客を、アジア市場で獲得する計画だ。

写真3●サイボウズが中国で現地企業向けに開催したセミナーの様子
写真3●サイボウズが中国で現地企業向けに開催したセミナーの様子

 パッケージ文化を輸出するこの方法は、外資系ERP(統合基幹業務システム)パッケージベンダーが10~20年前に、日本市場を開拓するために採用していた方法と似ている。スクラッチ開発やカスタマイズを好む日本市場に、「ベストプラクティス」という概念や考え方を広めることで、日本市場を手中に収めた。日本のソフト会社もやっと、ビジネスの概念や文化を輸出する取り組みができるようになってきたといえる。

3年後がターゲット

 スクラッチ文化からパッケージ文化に変えるには、パッケージソフトのコストメリットを訴求する必要もある。人件費が安い中国では、日本製のパッケージソフトを購入するよりも、現地企業がスクラッチ開発したほうが安いケースが多いからだ。

 これに対しセゾン情報システムズの渡部宗樹HULFT事業部副事業部長は、「中国の場合、3年以内に状況が変わる」と指摘する。「人件費の上昇により、スクラッチ開発のほうが高くつくようになる」(同)からだ。そこで同社は3年先を見越し、データ連携ソフトの中国語対応版「海度」を2011年夏に中国市場に投入する。

 「運用の手間を軽減できることや、維持コストを下げられることなど、3年後を見据えてパッケージソフトの良さを今から啓発しておく」(渡部副事業部長)。同社におけるアジア市場の売上高は、現時点ではわずか700万円だ。だが、3年後には5億円にまで引き上げる計画だ。