ワルシャワ赴任以前、ポーランドには「旧社会主義国家」というネガティブな印象があった。ところが実際はどうだろう。この国は発展の真っただ中で、そんな様子は全くない。例えば、EU(欧州連合)27カ国の中で、リーマンショック直後の2009年に、ポーランドだけがプラス成長を維持したことをご存じだろうか。2010年はさらに力強い成長を遂げているのだ。

 2012年には、UEFA欧州選手権がポーランドとウクライナによって共催される。この4年に1度のサッカーの祭典のため、ポーランドでは今、スタジアムや空港、駅、道路の新築と改修工事が、急ピッチで進行中だ。

ブロードバンド化の波が急進行中

 インターネットのインフラも、ここ1~2年の間に著しく改善された。2009年のOECD調査によると、インターネットの平均速度はOECD加盟30カ国中14位と中位につけた。2007年は下から3番目だったので、遅まきながらブロードバンド化の波が訪れている。

 当社としても、ポーランドのインターネット通信事情の改善に一役買うべく、2010年5月にワルシャワにPOP(Point of Presence)を開設、IPトランジットサービスを開始した。IPトランジットサービスとは、インターネットの国際バックボーンとして各国の通信トラフィックを運ぶサービスのこと。ポーランドの大手通信事業者やインターネットサービスプロバイダー(ISP)が、当社のサービスを利用している。

 当社は、世界規模の広帯域IPバックボーンを持つ「グローバルTier1プロバイダー」と呼ばれるISPであり、インターネットの経路情報を他のISPから買わなくてもいい。各国の大手ISPや有名コンテンツサイトと直接接続しているため、IPトランジットサービスを利用すれば、遅延が少ない快適なインターネット環境を作れるわけだ。

 ポーランドは、クラクフ歴史地区やワルシャワ歴史地区をはじめ多くの世界遺産を抱えており、これらを紹介する多くの観光情報サイトがある。世界に情報発信しているこれらのサイトが、各国からも快適な環境で見られるとすればうれしい限りである。

 最後にクイズを一つ。欧州でポーランドのSNS(Social Networking Service)の普及率は(1)ベスト3、(2)ワースト3、(3)真ん中、のどれでしょう?

 答えは(1)である。当地で最近流行っているのは、ポーランド語で「nasza-klasa」(ナシャ・クラサ)というサイト、日本語に訳すと「私たちのクラス」という意味だ。クラスメイトを探すサイトが発展して巨大なSNSになっており、言わばポーランド版Facebookだ。このためかSNSの普及率は、西欧先進国を抑え、平均年齢28.8歳と若年層が格別に多いトルコに次いで、ヨーロッパで第2位なのだ。

谷口 学(たにぐち まなび)
NTTヨーロッパ ポーランド支店長。2009年2月に赴任。過去に勤務したフランスとは異なり、言葉が全く分からないポーランドでの生活は、当初は戸惑いの連続だった。ポーランド語の習得はそこそこに、現在はビジネスチャンスを求めて旧ユーゴ諸国やトルコまで、中東欧16カ国を飛び回っている。仕事を別にすれば、現在のお気に入りは魚料理の豊富なハンガリーとトルコである。