東日本大震災は携帯各社のインフラの在り方に課題を残した。想定外の破壊のエネルギーが押し寄せたとはいえ、最大で約2万9000局もの基地局がサービスを停止したほか、震災直後は輻輳(ふくそう)によって通話しづらい状態が続いたからだ。4月下旬に当面の復旧を終えた携帯各社は、“落ちない”基地局と“つながる”通話を目指して、新たな対策に着手した。
東日本大震災における携帯基地局の停止の要因として、最も多かったのは商用電源の停止だった。その数はおよそ約7割に上る。基地局の設備自体には損傷がなかったにもかかわらず、停電によってサービス停止したのである。
一般的に携帯基地局は3時間程度の停電には耐えられる容量の予備電源を持つ。しかしそれを超えると機能が停止してしまう。そこで各社が“落ちない”基地局としてまず取り組み始めたのが、基地局のバッテリーの強化である(図1)。
バッテリー強化は耐荷重との戦い
NTTドコモは約800の基地局を、エンジンをつなぎこむことによって無停電化し、さらに約1100の基地局で24時間バッテリー稼働を可能にする計画を打ち出した。既に設置場所の洗い出しを終えており、人口の約65%をこれらの基地局でカバーできる計画という。
ただしバッテリーの強化は簡単ではない。「24時間持つバッテリーの重さは約6トン、雨風を遮る設備を含めると合計10トンの重さになる」(NTTドコモの山田隆持社長)ため、建物の強度との戦いになる。
現実的にはマンションの屋上などへの設置は難しく、自立式の鉄塔などへの設置が中心になる。KDDIも基地局バッテリーの強化を検討しているが、設置場所の確保に苦労してようだ。同社の斎藤重成技術企画本部ネットワーク技術企画部長は「通常用いる鉛のバッテリーではなく、より軽いリチウム型のバッテリーを使えないか検討している」と話す。
なお同社は太陽光発電を用いたトライブリッド基地局を実験的に運用している。ただ、これも都市部への設置は難しく、電源を24時間喪失したときに長時間の動作を賄う電力の確保には至っていないという。