Q1 非常時に関係者が臨機応変に対応するには?
A1 アメフト型のチーム態勢が有効

 災害後の混乱のなかで事業を復旧させていくプロセスでは、関係者が状況に応じて臨機応変に対応を変えていかなくてはならない。行き違いを防ぐためには、関係者が集まって情報を共有したり、次に取るべきアクションを徹底したりする「場」を作ることが有効だ。

 部品通販のアールエスコンポーネンツ(横浜市保土ヶ谷区)はカルビーと同様、計画停電で受注や出荷作業ができる時間帯に制限を受けた。売り物の「受注翌日配送」を維持するため、計画停電の時間帯から、受注や出荷作業の締め時間を割り出して作業スケジュールを組んだ。しかし受注が予想以上に多かったり、出荷作業にトラブルが生じたりして作業が滞ると、次工程の作業が間に合わなくなるリスクがあった。

 そこで毎日、受注や調達、出荷などの関係者が集まるミーティングを2時間ごとに開催した。全員が集まって、受注や物流など各部門の作業進捗を確認したり、トラブルの解決策を捻出したりすることで、連携して時間内に業務を終わらせるようにするためだ。本社と横浜市瀬谷区にある物流センターで同時に情報を共有できるよう、ミーティングには電話会議システムを使った。

 兵頭克邦代表取締役社長は「非常時のマネジメントはアメリカンフットボール型。1回の攻撃や防御が終わるたびに全員が集まって次の作戦を立てるように、関係者が頻繁に集まって次の対策を共有すべきだ」と話す。

テレビ会議システムを活用

 離れた拠点同士で話し合う場を持つうえで、有効なツールがテレビ会議システムだ。関係者が顔を見ながら話せるので、電話会議よりも内容を理解しやすいメリットがある。

 大成建設では東京本社に設置したBCP対策総本部と、東北の現地対策総本部が連携し、現地に必要な人や物資を送り出している。その意思決定にテレビ会議システムを活用している。地図情報システムを使って建物の被災状況や対応の進捗をマッピングした情報を本社と東北で共有し、リアルタイムの意思決定に生かした(写真)。

写真●大成建設はテレビ会議や地図情報システムを活用し、2つの災害本部で意思決定
写真●大成建設はテレビ会議や地図情報システムを活用し、2つの災害本部で意思決定

 同社は2006年にBCPを策定して以来、災害時の対応をシミュレーションした訓練を毎年実施している。このなかでテレビ会議や地図情報システムを使った拠点間の情報共有も疑似体験してきた。テレビ会議を使ったバーチャルな全員参加型のコミュニケーションに慣れておいたことが、現実の震災対応でも生きている。

 専門の端末を必要とせず、パソコンにカメラを接続して使うウェブ会議システムも普及している。アイリスオーヤマが利用するジャパンメディアシステム(東京都千代田区)の「LiveOn」やブイキューブ(東京都目黒区)の「V-CUBE」は、映像や音声に加え資料も共有できる。