今回の震災直後、多くの組織は、復旧の手順を急いで判断しなければならなかった。この手順を誤ると、復旧への時間や被害が膨らみかねない。ところが、事故や災害の現場からの情報は思うように集まらないことが多い。大林組ではIT(情報技術)を駆使して、優先順位を判断するための情報を収集。BCPで掲げる復旧目標をほぼ達成した。
72時間以内に施工物件の応急処置を全て完了する─。
大林組がBCPで掲げる数値目標である。大手ゼネコン(総合建設会社)は施工中や施工済みを合わせると数千もの物件に関わっている。東日本大震災のような大規模災害が発生すると、数千ある建物の一つひとつについて被害状況を確認し、どの建物から応急処置や復旧工事に取り掛かるべきかを判断する必要がある。被災度合いや緊急度に応じて優先順位を付けるという意味で、まさに建物の“トリアージ”といえる。この目標値の達成に向けた切り札になるのがITだ。
築年数や耐震性能などで自動判定
大林組は建築年数や耐震性能を示す指標である「Is値」、震度などから、震災が建物にどのくらい影響を与えたかを自動で判定するシステムを構築している。震度4を超える地震が発生すれば、自動的に起動する仕組みだ。
3月11日に起きた東日本大震災でも、発生直後にシステムが起動し、トリアージに一役買った。山口洋平総務部庶務課長(写真1)は「東北地方の沿岸部など津波の被害が甚大で近づけなかった地域を除くと、72時間以内という目標値はほぼ達成できた」と胸を張る。
さらに目視のデータを加えることで、判断の精度を高める仕組みも導入している。2011年1月から試験導入中の「被害情報自動集約システム」だ(図)。GPS(全地球測位システム)機能を備える携帯電話で撮影した建物の写真や調査員の被害状況に関するコメントなどを送信・集約できる(写真2)。