IFRS(国際会計基準)適用延期をどう考えるかを関係者・識者に問う緊急特集。最後となる第5回は、2011年6月30日に開催された企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議の様子をお届けする。審議会では産業界や関連団体、投資家、学者など様々な立場の委員が活発に意見を述べた。立場の異なる各人の議論はかみ合わず、次回の議論の内容は読めないまま2時間の審議会が終了した。


 2011年6月30日に開かれた企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議は、開始15分前に傍聴席が満席になるほどの混雑ぶりだった。IFRSについて審議する企業会計審議会総会の開催は2月24日以来、約4カ月ぶりだ。前回の総会もIFRSの強制適用について議論をしたが、傍聴者が満席になるほどではかった。

 09年6月に開催された日本のIFRSの強制適用の方針である「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」をとりまとめた企業会計審議会や企画調整部会も、同じ部屋ではなかったが席を埋め尽くすほど傍聴人がいた記憶はない。傍聴人の多さからも今回の総会への注目の高さが伺えた。

自見大臣の挨拶で開始

 16時に開始した審議会の冒頭、自見庄三郎金融担当大臣が6月21日に発表した「IFRS適用に関する検討について」を補強する形で挨拶を述べた。

 自見大臣はIFRSの適用について、米国の態度が中間報告の公表時と変わってきていることや、東日本大震災の発生などの環境変化を挙げ、「中間報告の見直しをしっかりやっていただきたい」と、中間報告そのものを見直すように審議会に促した。最後に「審議会のこれまでの取り組みにとらわれず、自由で闊達な議論をお願いする」と加えている。挨拶の詳細は金融庁のWebサイトで公表している。

 自見大臣の挨拶の後には、当日の二つある議題のうちの一つである「中間監査基準」について、「中間監査基準及び四半期レビュー基準の改訂に関する意見書(案)」が検討された。会場の委員からまったく意見は出ずに、意見書は自見大臣に手渡され、ほんの数分程度で一つめの議題は終わった。

 二つめの議題は「国際会計基準(IFRS)について」だ。新任の委員の紹介に続いて、審議会会長が指名する形で配布されたIFRS関連の資料について説明が始まった。最初に資料の説明をしたのが三菱電機常任顧問の佐藤行弘氏だ。同氏は「我が国のIFRS対応に関する要望(以下、要望書)」を5月25日に提出した21社の代表として、要望書について会場の委員に対して説明した。

 要望書では、(1)上場企業の連結財務諸表へのIFRSの適用の是非を含めた制度設計の全体像について、国際情勢の分析・共有を踏まえて、早急に議論を開始すること、(2)全体の制度設計の結論を出すのに時間を要する場合には、産業界に不要な準備コストが発生しないよう、十分な準備期間(例えば5年)、猶予措置を設ける(米国基準による開示の引き続きの容認)ことなどが必要、の二つを求めている。

 佐藤氏は二つの要望について「冒頭の大臣挨拶と軌を一にしている」と表現。IFRSの適用について、「日本の経済発展のために抜本的な見直しが必要である」と強調した。コンバージェンスの進め方や、税法・会社法との関連など検討すべき点があるとした。

 要望書に名を連ねたのは21社。新日鉄、JFEホールディングス、住友金属工業、トヨタ自動車、パナソニック、日立製作所、東芝、三菱電機、三菱重工、IHI、キヤノン、旭化成、三菱ケミカルホールディングス、三菱UFJリース、三菱地所、JXホールディングス、ニコン、セブン&アイ・ホールディングス、リコー、東海ゴム工業、愛知産業である。各社の社長や役員などに加えて、日本商工会議所が署名している。