日本生命保険の基幹系システム刷新プロジェクトが最終段階に入った。同社は2007年から5年間で1500億円を投じる「新統合計画」を進めており、2012年4月に顧客管理や契約管理といった基幹系システムが全面稼働する見込みだ。同社のシステム開発プロジェクトとしては、過去最大の規模だ。

 巨費を投じる目的は、肥大化したシステムのスリム化である。日本生命はかつて保険金の不払い問題を起こし、金融庁から業務改善命令を受けた。背景にあるのは、業務と商品が複雑化しすぎたことだ。業務と商品をスリム化し、併せてシステム構造も見直すことで支払い漏れの根絶を狙う。これによって、業務コストを削減すると共に、顧客サービスを向上させる考えだ。

 まずは業務プロセスの見直しだ。「これまでは部分最適になっていた機能を、全体最適の視点で一つに統合する」。矢部剛 執行役員新統合推進部長はこう語る。

 日本生命ではこれまで、顧客への提案から契約、アフターサービス、そして保険金の支払いなど、業務プロセスごとに別々のシステムを構築してきた。その結果、各プロセスで共通するはずの契約管理や顧客管理の機能が各々のシステムで重複してしまった。

 新システムでは、これらの機能を集約する()。さらに「統合顧客管理システム」に顧客情報を集約し、「営業職員だけでなく代理店の担当者も、各顧客がどのような商品を契約しているかをつかめるようにする」(矢部執行役員)。

図●日本生命保険が「新統合計画」で構築する基幹系システム
図●日本生命保険が「新統合計画」で構築する基幹系システム

 もう一つは、商品構成を絞り込むことで、商品や契約情報を扱う「契約管理システム」をスリム化することだ。

 今までの保険商品では「半年払い」のような保険料の支払い方法も選べるが、ほとんど利用されていなかった。こうした状態のまま機能強化を重ねた結果、契約管理システムのステップ数は2000万程度にまで肥大化した。新システムでは、商品構成を簡素化して6割減の800万ステップ程度に減らす。システム設計・開発はニッセイ情報テクノロジーが担当する。

 「商品の販売から支払いに至るまで、保険にかかわるすべての手続きを見直す」と矢部執行役員は力を込める。