世界のITサービス市場で上位を独占するIBM、ヒューレット・パッカード(HP)、アクセンチュアが、拡大基調にある日本企業の海外展開需要を虎視眈々と狙っている。これら米国勢は、約63兆円(7631億ドル、1ドル=83円で換算。2009年、米ガートナー調べ)におよぶ世界市場で1位、2位、4位に着ける。米国勢はその強さに磨きをかけ、国内ベンダーの独壇場だった日本企業からの受注の切り崩しに本腰を入れ始めた。

 世界中をカバーするサービス拠点、サービス品質とコスト競争力を両立させる原動力となる数万人規模のインド人技術者、グローバル企業からの数多くの受注実績――。IBMやHP、アクセンチュアといった米国勢は、ITサービス事業で国内ベンダーの先を行く(図1)。

図1 地域別に見た日米主要ベンダーのサービス拠点の分布
図1 地域別に見た日米主要ベンダーのサービス拠点の分布
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 世界のグローバル企業は、こうした米大手を頼りにする。グローバル展開に力を入れる日本企業の一部にもそうした傾向は見られる。例えば富士フイルムホールディングス(富士フイルムHD)は、独SAP製のERP(統合基幹業務システム)パッケージを使って構築した基幹システムの運用を、2010年春から米大手に委託している。中国・上海のサービス拠点から、日本にある基幹システムを遠隔運用してもらっている。富士フイルムHDは遠隔運用サービスを使うことで、運用コストを3~4割程度下げたもようだ。

 グローバルに事業展開する富士フイルムHDは日本、東南アジア、北米、南米、欧州の世界5極で基幹システムの集約を進めている。2015年3月までにそれぞれ1カ所ずつ、世界で計5カ所のデータセンターに基幹システムを統合する構想を持つ。こうしたIT戦略を前提にすると「海外に拠点が少ないITベンダーとは付き合えない」。富士フイルムHDの水野滋夫経営企画部IT企画グループ長は言い切る。同社のシステム案件を受注するのは、必然的に米大手が多くなる。

 ただし米大手にも課題はある。それは、海外進出する日系企業からの受注拡大だ。日系企業の中で、富士フイルムHDのような決断を下しているのは、現時点では日本を代表する超大手クラスにとどまる。大手クラスの案件については、国内ベンダーがそれなりに存在感を示している。米大手はここの切り崩しを狙う(表1)。

表1 米大手ベンダーにおける日系企業のグローバル化支援に向けた取り組み
表1 米大手ベンダーにおける日系企業のグローバル化支援に向けた取り組み