スカパーJSATホールディングス(スカパーJSAT HD)は2011年5月12日、「2010年度決算及び中期経営計画説明会」を開催した。代表取締役社長の高田真治氏は、2010年度連結業績を報告後、2011年度から2015年度までの5カ年を対象にした新たな中期経営計画(2011年5月11日発表)についての説明を行った。

BSスカパー!(仮称)を核に

 有料多チャンネル放送事業では、デジタルテレビ端末の普及を最大限に利用して、新BS放送および東経110度CS放送「スカパーe2」を主軸に加入者数の増加を図る。スカパーJSAT HDは、子会社のスカパー・エンターテイメントを通じて、2011年10月にBS新チャンネルを開局する。このチャンネルの名称として、「BSスカパーを考えている」という。このBSスカパーを活用して、スカパー!e2の新規加入者の獲得につなげる戦略を推進する。

 3波共用受信機の所有世帯には、BSデジタル放送は受信できるが東経110度CS放送の受信には対応しない世帯も存在する。こうした世帯に向けて、BSスカパーではBSのオリジナル番組に加えて、スカパー!e2の有力コンテンツを放送していく。「BSスカパーをスカパー!e2で放送する番組のショーウィンドーとしての役割を果たすチャンネルにしたい」という。

スカパー!HD完全移行、2014年度末前を目指す

 一方、東経124・128度CS放送「スカパー!」では、スカパー!SD(映像の符号化方式はMPEG-2)加入者のスカパー!HD(同H.264)への移行を促進する。移行施策として、番組供給事業者の協力の下で、スカパー!HDの番組パックの引き下げを2011年7月に行う。「スカパー!よくばりパックHD」の視聴料は月額3980円(現在は月額4700円)に、「スカパー!えらべる15HD」は月額3280円(同3800円)に変更することを会見で報告した。今回の説明会では、スカパー!SDを2014年度末(2015年3月末)までに終了することも発表された。番組供給事業者の理解を得て、「できれば2014年度末よりも早い時期にH.264方式に完全移行したい」としている。

 スカパー!のチューナーの普及策については、現在の施策であるスカパー!HDチューナーのレンタル料6カ月無料キャンペーンを報告したうえで、「今後、メーカーとの連携を深めて、より多くスカパー!チューナーが出回るような環境をつくりたい」とした。

 インターネット・モバイル向け動画配信サービスの開発も推進する。「我々が提供するサービスの付加価値向上という観点でやっていきたい。今は家庭内の視聴が中心だが、いつでもどこでも視聴できるような仕組みの確立を目指す」という。このほかに、「顧客視点でのマーケティング」と「コスト構造の抜本的な見直し」も重点項目として挙げた。

スカパー!、160万件以上を確保したい

 これらの施策によって累積加入者数(2011年4月末時点で373万7836件)を2015年度末に400万件以上にまで増やしたい考えである。2011年度以降の加入者数については、「スカパー!の加入者数は純減が続いているが、2014年度にはこの傾向を止めて、維持・拡大に転じたい。2015年度末時点で160万件以上の加入者数の確保を目指す。スカパー!e2は純増傾向を維持したい」と述べた。

 衛星事業の中期計画の骨子は三つである。具体的には、「災害対策・BCP(事業継続計画)に役立つサービスの提供に加え、事業領域の多角化により事業基盤を強化する」「成長市場のアジア・オセアニアを中心に海外オペレーターとの連携などにより、海外比率を大幅に引き上げる」「世界レベルのオペレーターと並ぶコスト構造を実現し、グローバルで戦う体制づくりを行う」──とした。重点項目としては、(1)国内衛星通信事業の基盤強化、(2)宇宙ビジネスの推進、(3)新規事業領域への積極展開、(4)海外衛星通信事業の拡大、(5)コスト構造の抜本的な見直し──を挙げた。衛星事業者としてアジア・オセアニア地区で第1位の地位確立を目指す。

VODサービス単体で事業を展開する意志は…

 高田氏は会見終了後のカコミ取材で、多チャンネル放送事業の重点項目の一つである「インターネットテレビやモバイル向けサービスの開発」については、「大規模なコンテンツを抱え込んで、VODサービス単体で事業を展開することは考えていない」と述べた。現在のチューナーのある自宅でないとスカパー!などの番組を視聴できないという問題を解決する手段と位置付け、検討を進めていると延べた。