特にこの1~2年、海外ITベンダーの買収を活発化してグローバル対応力を高めつつあるNTTデータと富士通、日立製作所。日本のユーザー企業の海外進出を商機ととらえ、世界規模で動き出すIBMやヒューレット・パッカード(HP)などの米国勢。さらに日本でも大型案件を獲得するなど、台頭するウィプロなどインド勢――。68兆円の世界ITサービス市場をめぐり、国内外の大手ITが本格的に激突する時代に入った。
 国内ベンダーに勝機はあるのか。日本のユーザー企業は、国内大手と米国系、インド系による三つ巴の戦いから目が離せない。ITサービスの調達を世界レベルで最適化するには、勝ち組ベンダーと付き合うのが得策だからだ。争奪戦を通じて、世界で通用するITベンダーの理想の姿が見えてきた。

写真1 NTTデータが買収した米インテリグループは、インドに拠点を持つ
写真1 NTTデータが買収した米インテリグループは、インドに拠点を持つ

 NTTデータ、富士通、日立製作所の国内IT大手3社が、インド拠点を急拡大させている(写真1)。NTTデータがインドに抱える技術者数は、今後1年間で1割以上増えて1万人超となる見込みだ。富士通は3年後をメドに、インドの技術者を今の2倍の5000人に引き上げる。日立も数年後には現在の2倍に相当する6000人規模にする計画だ。

 インド拠点の増強は、ITサービス事業を拡大するための必要条件である。高い技術力を持つ人材を安価かつ大量に確保できるからだ。「サービス品質とコスト競争力を海外大手並みに高めるには、インドでの人材確保を急がなければならない」(NTTデータの榎本隆副社長)。目指すのはグローバルITベンダーとしての理想的な姿。インドの技術者を使い、世界中へダイナミックにITサービスを提供できる体制の構築だ。

世界のITサービス市場、2014年に78兆円へ

 米ガートナーの推計によると、世界のITサービス市場規模は2009年に7631億ドル(約63兆円、1ドル=83円で換算)。これが2011年は8244億ドル(約68兆円)、2014年には9439億ドル(約78兆円)にまで拡大する。けん引役はアジアや中南米といった新興国市場である。同市場は年平均10~11%の成長が続く。一方、日本のITサービス市場の平均成長率は円換算で0.8%にすぎない。しかも日本のユーザー企業は、海外進出に伴い海外でのIT投資を増やしている。国内ベンダーが収益を伸ばすには、海外市場に打って出る必要がある。

 なお、2009年の売上高ランキングは第1位がIBMで、以下、HP、富士通、米アクセンチュア、米CSC、米ロッキード・マーティン、仏キャップジェミニ、NEC、NTTデータ、米SAICと続く。インド大手のタタ・コンサルタンシー・サービシズは25位、インフォシス・テクノロジーズは33位、ウィプロは36位。

 IBMやHP、アクセンチュアといった米大手はインドの自社拠点に6万~8万人規模の技術者を抱える。この動員力を生かして、世界各地からオフショア開発を請け負ったり、システム運用などのサービスを提供したりしている。国内大手はインドの人員規模ではまだまだ米大手に劣るものの、この数年間で急速に追撃体制を整えた。各社とも、日本の顧客ニーズに合致した日本流のグローバル対応力に磨きを掛けている。