自社運用(オンプレミス)のメールシステムからクラウド型メールに移行するとなると、ユーザーインタフェース(UI)や操作性が変わることを嫌う従業員からの抵抗が予想される。クラウド型メールへの移行や選定に際しては、こうしたユーザーの利用環境(利便性)と、セキュリティや運用管理面での制約を、天秤(てんびん)にかける必要がある。

 ユーザーの利用環境について検討すべき具体的な項目は、(a)メールシステムをオンプレミスで運用する場合に使うメーラー(メールソフト)との機能面の違い、(b)エンドユーザーの使い方、(c)スマートフォンなどモバイル端末への対応、(d)メールボックス容量---である。

実は汎用メーラーでも利用できる

 まず(a)の機能面から考えると、メールをサーバーから読み出すときに使うPOP3IMAP4といった2種類のプロトコル(通信手順)に対応した汎用メーラーと同等の使い勝手を、クラウド型メールにも求めるユーザーが多い。具体的には、受信フォルダーとタイトル、本文の3画面構成であり、ドラッグアンドドロップ操作で任意のフォルダーにメールを振り分けられるといった操作だ。また、組織の構造に合わせてアドレス帳を作ることができる点も重視される。

 クラウド型メールというと、まず想定されるのはWebブラウザーからの利用だが、実はほとんどのクラウド型メールサービスはPOP3にも対応している。中にはIMAP4にも対応したサービスまである。企業が自社のファイアウォール越しの通信を従業員に許可すれば、こうしたPOP3/IMAP4対応のクラウド型メールは汎用メーラーからでも利用できるわけだ。これならUIは変わらない。

 また、UIをまったく変えないというわけにはいかないが、機能だけを考えれば、多くのクラウド型メールでは、POP3対応メーラーと比べてそん色ないほどの機能をWebブラウザーからでも利用できる。例えばNTTコミュニケーションズのクラウド型メール「Bizメール」(写真1)。同社の井上真也プラットフォームサービス部プラットフォームエンジニアリング部門第2グループ担当課長は、「(マイクロソフト製のメーラーである)Outlookと同等の操作性を、Webインタフェースで提供することを目指した」と説明する。

写真1●振り分けフォルダーへのドラッグアンドドロップが可能なWebメール(Webブラウザーで利用するクラウド型メール)の例
写真1●振り分けフォルダーへのドラッグアンドドロップが可能なWebメール(Webブラウザーで利用するクラウド型メール)の例
NTTコミュニケーションズの「Bizメール」はOutlookと同等の操作性を実現している。
[画像のクリックで拡大表示]

 マイクロソフトのクラウド型メール「Exchange Online」でも、「Outlook Web Access」と呼ぶOutlookによく似たUIをWebブラウザー上で実現できる。「(メール機能と)カレンダー機能との連携以外は、パソコン向けソフトのOutlookとほぼ同等の機能」(米田真一インフォメーションワーカービジネス本部ビジネスオンラインサービスグループエグゼクティブプロダクトマネージャ)だという。このように、パソコン向けのメーラーに近い操作が可能なUIを持つクラウド型メールが増えている。